7 / 332
両片想い4
「ああっ、ヤバぃ」
『それでもずっと好きでいられるのなら、恋人にしてやってもいい』
「んっ…は…ぁっ、もっイキそう」
『やれやれ、子どもには刺激が強かったか』
触れていた先生の右手があっけなく外され、腕を組んでそれを隠した。その態度でイクまでやってくれと強請っても、触れてはもらえないことが分かった。
寸止めを食らった当時の俺は、涙目で荒い呼吸を繰り返しながら、隣にいる愛しい人を睨むのがやっとだった。
『とりあえず俺の恋人になりたければ、志望校に合格は必須だからな。晴れて合格したら、キスすることを許してやってもいい』
「キス……?」
『ああ、お前が好きなときにしていい権利だ。ただし、それ以上のことをしようとしたら俺は家庭教師を辞めるし、恋人にする権利も自動的になくなる』
このとき以降、先生はタメ口で喋るようになった。だけど親のいる前では敬語を使うという、俺が呆れるくらいの外面の良さを発揮した。
こうして長い間、いろんなことに虐げられた俺は、中学卒業にやっと先生とキスすることを許され、躰の関係にいたるまでには、3年の月日を有することになる。
高校入学と同時に告げられたこと――目指していた大学のワンランク上のところに行って合格しないと、恋人として認めないという、ありえないワガママのせいで、3年も我慢させられたのである。
結果的には塾通いと先生の家庭教師の両立で必死こいて勉強し、ギリギリの成績で何とか合格した。
そんな苦労ののちに先生をはじめて抱こうとしたら、先走って達してしまったことは恥ずかしくもあり、今考えるといい思い出だったりする。
俺を散々翻弄した先生は大学を卒業後、親父のコネで会社に入社した。
そのあとを追うように、大学を無事に卒業した俺も同じところに入社して、先生の部下になった。
部下だけど恋人――俺としては、こうして一緒にいられる環境下だからこそ、ハッピーな出来事が待ち受けていると思っていた。
好きな人と同じ空間にいられる幸せを味わいたかったのに、現実はそう甘くはなかったのである。
ともだちにシェアしよう!