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両片想い4

「ああっ、ヤバぃ」 『それでもずっと好きでいられるのなら、恋人にしてやってもいい』 「んっ…は…ぁっ、もっイキそう」 『やれやれ、子どもには刺激が強かったか』  触れていた先生の右手があっけなく外され、腕を組んでそれを隠した。その態度でイクまでやってくれと強請っても、触れてはもらえないことが分かった。  寸止めを食らった当時の俺は、涙目で荒い呼吸を繰り返しながら、隣にいる愛しい人を睨むのがやっとだった。 『とりあえず俺の恋人になりたければ、志望校に合格は必須だからな。晴れて合格したら、キスすることを許してやってもいい』 「キス……?」 『ああ、お前が好きなときにしていい権利だ。ただし、それ以上のことをしようとしたら俺は家庭教師を辞めるし、恋人にする権利も自動的になくなる』  このとき以降、先生はタメ口で喋るようになった。だけど親のいる前では敬語を使うという、俺が呆れるくらいの外面の良さを発揮した。  こうして長い間、いろんなことに虐げられた俺は、中学卒業にやっと先生とキスすることを許され、躰の関係にいたるまでには、3年の月日を有することになる。  高校入学と同時に告げられたこと――目指していた大学のワンランク上のところに行って合格しないと、恋人として認めないという、ありえないワガママのせいで、3年も我慢させられたのである。  結果的には塾通いと先生の家庭教師の両立で必死こいて勉強し、ギリギリの成績で何とか合格した。  そんな苦労ののちに先生をはじめて抱こうとしたら、先走って達してしまったことは恥ずかしくもあり、今考えるといい思い出だったりする。  俺を散々翻弄した先生は大学を卒業後、親父のコネで会社に入社した。  そのあとを追うように、大学を無事に卒業した俺も同じところに入社して、先生の部下になった。  部下だけど恋人――俺としては、こうして一緒にいられる環境下だからこそ、ハッピーな出来事が待ち受けていると思っていた。  好きな人と同じ空間にいられる幸せを味わいたかったのに、現実はそう甘くはなかったのである。

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