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両片想い6
そのせいで俺の中にある不安が、いつも胸の中を支配していた。
クォーターの目立つ容姿でそれなりに背も高く、誰にでも愛想が良くて仕事もできる、格好いい先生に近寄ってくる女子社員がいるのを、入社してからたくさん目にした。
恋人の俺が新入社員として入ってくるまでに、間違いなく大勢に言い寄られているだろう。
俺の前以外では外面よろしく、みんなに対して平等に接していることもあり、特別な関係に進展させようとする輩は、極小数に限られているものの――。
(先生の恋人として認められているのに、「俺のものだからな!」なんて、公明正大に声できないのがつらい……)
今日だって仕事中なのに、最近入ったばかりの隣の課にいる派遣社員の女に廊下で話しかけられて、デレデレしていたように見えてしまった。
思い出しただけでも、ムカつくことこの上ない。
新入社員として、俺は真面目に仕事をしていた。たまたま分からないところが出たから誰かに聞こうとしたけど、忙しそうな感じが雰囲気になって伝わったきた。
それに困って課長を見ると、そんな様子はお構いなしに部署を出て行く。いつもなら気遣うはずなのに、スルーしたのがどうにも気になって、あとをつけてしまった。
向かった先がトイレだと思ったのもつかの間、女に言い寄られてるところを目撃して足を止めた。慌てて周囲を確認しながら、柱の影に身を隠す。
甲高い女の声はところどころ聞こえるのに、課長の低い声はまったく聞こえない。だけど女の様子と微笑みを振りまく課長の様子は、明らかに楽しそうだった。
さらさらの長い黒髪、自然と色気を放つ大きな胸に丸いヒップは、普通の男なら垂涎モノだろう。まさに目の保養だ。
(あ~、見ていられない。鼻の下伸ばして、思いっきりデレデレしやがって!)
そんなイライラが募った結果、出社するなりホテルまで強引に拉致ってしまった。
いつもの俺たちなら、それなりに仲良く食事しながらお酒を飲み、そういう雰囲気にもっていったのちにホテルを使っていた。
「課長……、いや先生は、嫌々俺と付き合ってるわけ?」
「もうお前の先生じゃないんだから、その呼び方を改めろ」
「鉄平って呼んだら怒るくせに」
「当たり前だ。名字を使え」
色素の薄い前髪を掻きあげながら、鋭い視線を飛ばしてくる。俺の苛立つ気持ちが移ったのか、眉間に深い皺ができていた。
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