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両片想い14
首から下の上半身裸の写真を撮影し、それを添付したコメントを使ってゲイ専門のSNSで呼びかけた。
『俺の初めてと1週間好きにできる権利を売ります。どうぞよろしく!』
すると俺の躰を求めて、たくさんの男が競うようにお金を出した。値段がどんどん釣り上げられた結果、一番の高値で俺を買ってくれた人は、某IT企業の若い社長さんだった。
待ち合わせ場所に現れた社長さんをはじめて見たときの印象は、そういう趣味をしているようにはまったく見えない、とても爽やかそうな人で、逆に面食らってしまった。
おとり捜査の警察官かもしれないと、内心ひやひやしたんだ。
「はじめまして鉄平くん。君って、ハーフなのかな?」
開口一番に告げられたセリフを聞いて、愛想笑いしながら答える。
「はじめまして。クォーターです」
「そんな君とこれからいいコトするんだけど、自分を売らなきゃならないくらいに、お金が必要なんだ?」
なんてことない質問をするように、社長さんに訊ねられた。
立ったまま世間話に花を咲かせる内容じゃなかったが、フレンドリーに話しかけられたお蔭で、これまでの経緯を淀みなく喋った。
「そっか、なるほどね。生活するだけでも大変なのに、学校に通いながらバイトもそれなりの数をこなすとなると、躰がいくつあっても足りないよな」
「はい。母親は浮気相手と別れたっぽいんですが、そのせいで抜け殻になっちゃって、パートを休みがちになってるんです」
「あのさ、君の初めてと1週間好きにしていい権利だけど、延長する気はない?」
「延長ですか?」
いきなりの提案に、眉根を寄せながら疑問で返してしまった。
「毎月、君にお小遣いをあげることを前提に、俺と1年契約で恋人になってもらうってことさ」
「1年契約で恋人……」
「契約料はそうだな、毎月20万円。それにプラスして俺とエッチしたら、ボーナスを提供してあげるよ」
あまりにもうますぎる話に、頭の中が一気に混乱した。お金をいただけるのなら、たくさん欲しい。しかし、それの代価は自分の躰。そしてこの人を悦ばせることだろう。
黙り込んだ俺に、社長さんはたたみかけるように交渉する。
「正直なところ、高校生とこんな話をする時点で、世間的にはアウトなことだけどさ。あれこれ難しく考えずに、ビジネスとして考えてみたらいいんじゃないかな」
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