18 / 332

両片想い15

「ビジネスですか」 「そう。現実問題、鉄平くんはお金が必要だろ。俺はそれを、たくさん支払うことができる存在だよね?」  しがない高校生の俺を、高値で買ってくれる人が目の前にいる。 「そうですね……」 「それだけの大金を払う価値が、君にはあるってことさ。俺と付き合えば、あくせくバイトをする苦労がなくなって、自由な時間が手に入る。下がった成績を上げるのなら、その時間を有効活用すればいい。何だったら、俺が塾に通わせてやるよ」  俺にとって、告げられた言葉のすべてが至れり尽くせりで、迷うことなく二つ返事でOKした。  社長さんと付き合ってる間は、他の男と関係を持たないことを条件に、丸1年いろんなことを教わりながら、たくさんのお金を貯金することができた。  付き合いを解消しても、大学受験までは塾代を払い続けてくれたりと、最後の最後まで面倒を見てくれたいい人だった。  そんな優しい社長さんと別れたあとの俺は息抜きを兼ねて、いろんな男と関係をもった。1年かけて念入りに開発された躰は、男を求めずにはいられないくらいに、卑猥なものになってしまった。  そのせいで大学に入ってからも、細々と援交を続けた。  資金は当面大丈夫な額を持っていたが、快楽を得るためだけに、惜しげもなく躰を許してしまった。しかしそんなことばかりしてお金を稼いでいることや、ゲイだとバレたら身も蓋もなくなる。  友人のツテで、高校生の家庭教師のバイトをはじめることにした。  ノウハウは社長さんに通わせてもらった、塾の指導を元にした。それと一緒に自分の躰をエサにして、教え子たちを誘惑する。  そんなやり方で家庭教師を続けて、教え子たちの成績を伸ばしていたところに、壮馬の父親に声をかけられた。 『中学3年の息子なんだが、塾に通わせてもさっぱり成績が上がらなくて困っているんだ。優秀な君を、家庭教師として雇いたい』  ちょうど1件、勉強をそっちのけで性的に迫りまくるという、問題ありまくりの高校生との関係を解消すべく、家庭教師を辞めるところだったので、実にいいタイミングでスカウトされたと、このときは思った。

ともだちにシェアしよう!