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両片想い48

☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。  石川さんが出て行った瞬間、鉄平はがっくりとうな垂れながら、ものすごく小さな声で呟く。 「石川にアレを見られてたなんて、しくじった……。今後一切、壮馬に手を出しちゃいけないな」 「ここでしたキスもそうだけど、給湯室のキスも珍しかったもんね。いつもは、うまくあしらって終了なのに」  悔しそうな顔で長机をバシバシ叩きまくる恋人に向かって、宥めるように話しかけた。それなのに、まったく効力がなかったらしい。  ムスッとしたまま、俺の頬をぐりぐりする。八つ当たりもほどほどにしてほしい。 「坊ちゃんが全部悪いんだ。もっとしっかりしてくれたら、俺がこんなに苦労せずに済むんだぞ」  ずっと長机を叩いて気が済んだのか、最後に大きな音を立てるようにグーで殴り、じろっと俺を睨む。 「え~、俺ってばしっかりしてると思う。社内にいる問題児をこの手で成敗した上に、悪さができないようにコントロールもバッチリやってのけたでしょ?」 (俺としては鉄平に、そんなに苦労させてるつもりはないのにな) 「……おまえ、石川が悪さをしていたという相談、いつの間に受けたんだ?」 「受けてないよ、あれはハッタリをかましただけ」  舌を出して肩を竦めたら、眉間に皺を寄せて不快感をあらわにした。 「うわぁ、危ない橋を渡りやがった。どんな神経してるんだ」 「ついこの間入社したばかりの新人相手に、男に襲われたなんていう相談を、わざわざしないと思うけど」 「坊ちゃんはただの新人じゃない、社長の息子だろ。というかあのとき石川に論破されたら、どうするつもりだったんだ?」  額に手を当ててうんうん唸る鉄平に、へらっと笑ってみせた。 「別に。なるようになるかなぁと」 「まったく……。考えもなしにそうやって突っ込んでいくから、目が離せないんだ」  もしや俺が良かれと思ってやってることが、鉄平の苦労の種だったりするのか!? 「俺としては昔も今も、鉄平の視線をひとりじめしたいだけなんだよ」 「これ以上の我儘を言うな、さっさと戻るぞ。石川が戻ってるのに、俺たちが戻らないんじゃ示しがつかない」  少しでも甘い雰囲気にもっていくべく、会話をそんな感じにしたというのに、ひとりでやってろと言わんばかりの冷たい態度を、思いっきりとられてしまった。

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