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なおしたいコト6

「政治にまわしてる集中力を、少しだけでいいから、ぜひとも股間にまわしてほしいと考えた」  感じるように弄られている、耳の感覚を吹き飛ばしてしまった克巳さんの衝撃的な発言に、開いた口が塞がらない。 「何をバカなことを言ってるの。克巳さんからの要望が卑猥すぎて、素直に受ける気にもならないよ」 「卑猥とは失礼だな。ひとえに愛からだよ稜」  微笑みを湛える唇から語られた声は、いつもよりも低くて重みのあるものだった。そのせいか、胸の中にじんと染み込む。  座ったままでいる俺の顔が、耳に触れている手によって上向かせられ、それに覆いかぶさってように克巳さんの顔が近づいてくる。  ほんの少しだけ唇を開いて、彼からのキスを受け入れた。  久しぶりに感じる克巳さんの唇の感触だけで、瞬く間に完勃ちしてしまう。 「んっ、ンン…ぁあっ」  抑えようとしても、感じるたびに声がどんどん大きくなりそうで、ひやひやしながら舌を絡めた。  そんな俺の反応を楽しむかのように、克巳さんは容赦なく責め続ける。しまいには空いてる手でスラックスの上から、分身を撫ではじめた。 「はっ…あっあっあ、ぁっ、ダメだってば!」  いろんな意味でヤバくて、両手で克巳さんの手を握り締めて動きを止めた。 「稜、我慢しなさい」 「だって、こっ声が出ちゃう……」  押し殺した俺の声は掠れているだけじゃなく、明らかに感じまくった、淫らななものにしか聞こえない。具合が悪くて出しているなんていういいわけは、絶対に通用しないと思われる。 「君の場合は我慢しているのが、声だけじゃないだろ? ん?」  ドSの克巳さんの瞳はギラギラしていて、俺をいたぶる気が見るからに満々だった。 (くそっ! 早漏だと知っているくせに、こんなところでお触りするなんて――) 「克巳さんってば、場所をわきまえなよ。一応勤務中なんだし、ここはふたりきりじゃないんだからね」  セリフに重みを持たせるべく、むこう側にある扉に視線を飛ばした。

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