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なおしたいコト8

 注がれるまなざしは、とても優しげなものだった。 「空き時間や移動時間を使って寝るのは、確かに悪いことじゃない。だがそれは一時しのぎなんだ。夜の睡眠は、昼間の疲れをとってくれるものだからね」  俺が気落ちする前に、掴んだ手で自分に引き寄せて、きつく抱きしめてくれる。耳に聞こえる、克巳さんの鼓動がすごく心地いい。  迷うことなく、大きな躰を抱きしめ返した。 「克巳さん、心配かけてごめんなさい」 「この後におこなわれる会合は、そこまで重要視するものじゃない。キャンセルするからね」 「本当に大丈夫?」 「事前に、二階堂に確認してみた。彼の言うことなら、素直に信じられるだろう?」  有無を言わせない視線で、俺をじっと見つめる。反論できないその雰囲気に、顎を引きながら肩を竦めて両手を上げた。ここは素直に従うべく、克巳さんに負けましたというポーズをとるしかない。 「ここまで克巳さんの根回しがいいと、今後の仕事を丸投げしちゃいそうだな」 「秘書として、陵の仕事の補佐を完璧にこなさなければならないから、これは当然のことだよ。それに残念だが、そこまで甘やかすつもりはない。覚悟してくれ」  小さく万歳している、俺の後頭部の髪を何度か梳いてから、背中をいたわるように叩かれた。 「か、覚悟って何を考えてるのさ……」 「本来なら19時からの会合を終えたら、そのまま直帰だったろ?」 「その予定だったけど」 「ここでの仕事を終えてフリーになった陵を、このまま俺が帰すと思ってるのかい?」  耳元で告げられた克巳さんの声に、ゾクッとしたものを感じずにはいられない。 「も……もしかしてこのまま、克巳さんのマンションに拉致されちゃうのかな」 「さっき言ったろ。『早漏の治療をおこないたい』って」 「俺としては、せっかく久しぶりに克巳さんとエッチができるのに、そんな治療されたら、無駄なストレスがかかるかもしれないよ!」  一緒にイキたいという理由で、以前とても痛いことをされた上に我慢を強いられ、泣きそうになった経緯がある。だからこそ治療を阻止すべく、いつも以上に声を大にして、ストレスがかかることをアピールしまくった。

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