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なおしたいコト13

 容赦なく抓りまくる陵を見下ろしながら、痛いことを示すために、眉間に皺を寄せてみせる。 「克巳さんは分かってないよ。モデル出身の俺よりも、背が高いだけで目立つっていうのに、俺の傍で手際よく仕事をこなす格好いい姿に、みんなが釘付けなんだよ」 「みんながじゃなく、陵個人がだろう?」 「もちろん! 俺も含まれてる。だけど本当に目が奪われるくらいに、克巳さんは格好いいんだからね♪」  嬉しそうに言いながら、俺に顔を寄せる陵の動きを止めようと、近づいてくる唇に人差し指を押しあてた。 「ここで煽るなんてナンセンスだよ。あと何階上がればいいんだ?」  ストップをかけた俺を見ながら、不思議顔を決め込む。普段はしないその表情が可愛らしくて、自然と口角が上がった。 「確か、13階だったかな」  唇に触れた人差し指を外すと、陵は俺の首元に顔を寄せるなり、うなじにキスをする。唇の感触だけじゃなく吐息がかかって、かなりくすぐったい。 「残りは、たった2階しかないんだ。それくらい我慢できるだろう? 上りきったら、玄関前でキスしてあげるよ」  煽るように何度もキスを続ける陵に、苦肉の策を提案した。 「玄関前でなんて、克巳さんらしい。目の前に自宅があるのに、そこでヤっちゃうんでしょ?」 「どうなるかは、陵次第。そうやって俺を煽り続けたら、寒空の下で裸体を晒すことになるが、それでいいのかい?」 「克巳さんにくっつけば、寒くないもんね! と言いたいところだけど、寒がりな俺には無理な話だわ。キスは、自宅に帰ってからでいい?」  今が冬場でよかった。夏場だったなら、素直に自宅に上がってもらえなかったであろう交渉がうまくいき、安堵のため息をつく。 「分かった。それにプラスして冷えた躰を温めるのに、お風呂で乾杯するのはどうだろうか。陵の好きなビールの銘柄は、そろえてあるよ」  陵の腕に自分の腕を絡めてから、ゆっくりと階段を上りはじめた。すると俺を引っ張る勢いで、リズミカルに階段を上って行く。 「さすがは俺の有能な秘書さん。仕事終わりのビールほど、美味しいものはないからね。しかも克巳さんと一緒に乾杯できるなんて、マジで幸せだ~!」 「飲むのとヤるの、どっちが先だろうか?」 「それ、俺に聞くまでもない話でしょ♪」 「いつも通りということか。承りましたよ、将来有望な新人議員殿」  陵に引っ張られながら上って行くこの感じは、きっと俺たちの未来の姿なのかもしれない。ときには揉めたり不安になったりしながらも、結局はこうして、仲良く歩むことができる。 「陵、将来のために少しだけでいいから、早漏の治療をしなければね」 「え~……。将来のためってその言い方。もっとマシな頼み方があるでしょ」 「俺と同じタイミングで一緒にイケたら、もっともっと気持ちよくなれるよ。どうだい?」  途端に重くなった足取りの陵を、今度は俺が引っ張る番になった。 「……だったら頑張ってみようかな」  引っ張った立場になったはずなのに、すぐさま陵が俺を引っ張る。  無理するよりも、こうして尻に敷かれているほうが、もしかしたら性に合っているのかもしれないと思わされたが、その後の行為により熱くて甘い夜になったのだった。  おしまい

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