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悪い男4

「男なら、誰でもいいわけじゃない。おまえだから誘ったんだ」  おちゃらけた俺に合わせたのか、上條が笑いながら理由を説明してくれた。  彼女に見せる優しい笑顔で微笑まれたせいで、痛いくらいに胸が高鳴る。 「はっ、よく言うよ。男とヤるなんて、浮気のカウントに入らないって、さっき豪語したくせに。誘えばお持ち帰り確定な俺に、気安く声をかけただけだろ」  ドキドキしているのを悟られないようにすべく、無理やり顔を横に逸らして、上條から注がれる視線を外した。するとウエーブがかかっている俺の前髪に、いきなり触れる。視野に入る手の大きさに、思わずキョどってしまった。 「髪、綺麗だよな。伸ばすのウザくない?」  いきなりなされた髪への接触と話題転換に、どうにも気持ちが追いつかず、焦りを覚える。 「ほ…本当は短くしたいんだけど 、天パで悲惨なことになっちゃうし……」 「那月は細面だから、どんな髪形でも似合いそうなのにな」  上條の口から、自分の名前が唐突に飛び出したのをきっかけに、浮ついていた気持ちがしゃんとなる。髪に触れている手を、容赦なく叩き落としてやった。  口説くことに長けている目の前の男を、気合いを入れながら鋭い視線で睨みあげた。  これ以上近づいたら危険だと、頭の中で警報が鳴っていた。前カレがそうだったから。関係を持つまでは、ものすごく優しくしてくれたのに、その後は手の平を返す態度を取られて、痛い目を見た。  しかもコイツは彼女持ち。厄介さにおいては、輪をかけている。 「名前呼び、嫌だった?」 「言っとくけど、俺のほうが年上なんだよ。さん付けくらいすればー」 「さん付けしたら、頭が上がらなくなりそうな感じだったから、あえてしなかった。それに仲良くしたいし」  つっけんどんな俺の物言いも、まったく効いていないらしく、上條はへらっと笑いながら、見下ろしてきた。 「アンタみたいな軽いノリの男は、誘われても乗る気になれない」  チラッと上目遣いで一瞥して、その場を立ち去ろうとした。その瞬間に腕を掴まれ、強引に抱き寄せられる。  抵抗する前に塞がれた唇。俺を抱きしめながら背後にある木へと誘導し、固い幹に痛いくらいに背中に押しつける。 「ンンっ…ぁあっ」  抗う声と一緒に、呼吸まで奪うような、激しいキスだった。

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