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悪い男6

*** 『とにかく上條くんは、私の傍にいればいいんだからね。浮気なんて、もってのほかだよ。あとね――』  ミスキャンパスの彼女の繰り出すワガママが、日毎に厳しくなるせいで、ほとほとまいっていた。そんな微妙な関係を維持しているというのに、周囲から羨望のまなざしが、いやおうなしに注がれる日々にも、正直ウンザリした。  彼女のことが好きで付き合ったはずなのに、その気持ちはどんどん薄れていき、気がつけば自由にのびのびと行動している那月へと、俺の想いは移った。  誰とでも寝るという酷い噂が、大学構内のそこかしこで囁かれているというのに、我関せずというマイペースを崩さない那月に惹かれたのが、好きになった理由だと思う。  だから彼女には別れを告げたのに、別れたくないの一点張りを貫かれ、俺が冷たくあしらってもずっと彼女面された。  断り続けるという面倒くささも手伝ったので、仕方なくそのまま放置し、那月にアタックすることに決めた。  相手は、ビッチと噂されている年上。年下だからと舐められてあしらわれたら、そこで終了なのが分かった。  だから逢うたびに毎回声をかけつつ、必死に食らいつきながら、偉ぶった態度をとり続けてやった。  すると根負けした那月が、触れることを許してくれた。  あからさまな嫌悪感を示されなかったものの、仕方なく付き合ってやるという感じが、肌を重ねているうちに、なんとなく伝わってきた。  見つめると逸らされる、絶対に合わせない視線。煽る言葉をかけても、感じていないをひたすら貫く、強固なメンタル。  そんな気難しい相手を夢中にすべく、ゲイビを何本も見て研究した。ひとえに好きな相手を、とことん感じさせるために――。 『このあと、彼女とヤるんだろ。せいぜい頑張りな。俺もアンタに負けないように、抱かれに行ってくる』  クリスマスイブにプレゼントを渡して、想いを告白しようと思っていたところにかけられた言葉で、真実を告げる勇気が失せてしまった。  躰だけでつながる俺たちは、この先も変わらず、現状維持したほうがいいのだろうか――逢いたいときだけ言葉を交わし、抱きたいときに触れるだけの関係。しかも誘うのは、すべて俺から。那月は動かず、そこに立ちつくしているだけ。 (このままじゃ埒が明かない。アイツは絶対に動かないんだから、俺が自ら行動しないと!)

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