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抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい79

「いつものように、待たせておけばいいです。問題ありません」 「君も知っているだろう。執事殿は俺に対して、手厳しいことを言うって。この間だって、うちのに酷い言葉を吐き捨てたそうじゃないか」 「うちのが……なんて、大切にしていらっしゃるのですね」 「もちろん、男爵のことも大事に想っているよ」  咎めるような厳しい目つきで鋭く睨むローランドに、伯爵は慌てふためいて、取ってつけたような言の葉を口にした。 「僕は片田舎の男爵で、貴方の子を宿すことのできない、ただの男ですから、軽んじられるのは当然のこと」 「軽んじてなどいない! 信じてくれ」 「子爵夫人が怖くて、僕を抱けないくせに……」  徐々に弱々しくなっていくセリフを聞き、伯爵は首を大きく横に振った。 「いや、まさか。そんなのありえない」  否定の言葉を耳にするなり、ローランドはふわっと微笑む。その笑みは傍から見たら、してやったりな感じに見えるものだった。 「だったら隣の部屋で、僕を抱いてください。できますよね?」 「そ、それは――」  たたみかけるローランドの口撃で、伯爵は簡単に追い込まれてしまった。その場で考えていた自分の戦略を披露する前に、なにも言い出せないまま為す術もない。  伯爵が口をぱくぱくして、言葉を必死に探していると、ローランドの追撃がなされた。 「貴方に逢えなかった間、僕の性欲の処理をベニーにしてもらいました」 「なんだって!?」  思ってもいなかった展開に伯爵の顔色が、がらっと変わった。猜疑深い表情を目の当たりにしているというのに、自分の言うことは絶対正しいという自信に満ちた口調で、ローランドは語りかける 「だって彼は、僕の執事ですから。主人が困っている姿を見て手伝わない執事が、どこにいるのでしょう」 「男爵、君が執事殿に、そんなことをさせるとは思えない。冗談だろう?」 「冗談ではありません。本当のことです」  自分を深く愛するローランドが、そんなことをするとは思えなかった伯爵は、話の流れを変えるべく腰に手を当てながら、あえて威圧的な態度をとった。このまま話の主導権を奪い返そうと、口調にアクセントをつける。 「なにを言い出すかと思ったら、まったく! 俺を妬かせたくて、作り話をしているに決まってる。君が俺以外の男を受け入れるなんて、するわけがない」 「僕だって男なんです。アーサー卿に暴かれた性欲が、泉の水のように溢れ出し、この躰をおかしくするのです。ですから貴方と同じように、他の人を相手にしただけなんですよ」 「そんなことを言われても――」

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