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抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい80
普段おこなっていることを、満面の笑みを浮かべたローランドの口から、棚に上げられる感じで指摘され、伯爵はふたたび言葉に詰まった。
「自分はよくて、僕は駄目だという道理はあるのですか?」
「男爵と逢えなかった日々は、誰も相手にしていない。本当だ」
嘘か真かわからない伯爵のセリフに、ローランドは唇に湛えていた笑みを消す。黙ったままネクタイに手をやり、手際よく外して床に放り投げた。
「だったら、その証拠を見せてください。アーサー卿」
あからさまに挑発する行為を見て、伯爵は次の手をすぐさま考える。
肉体関係を結んでからというもの、恥ずかしそうに顔を俯かせて、誘うことを一切しなかった彼が、今は積極的に自分を誘う姿に、違和感を覚えずにはいられなかった。
「男爵悪いが、今日のところはお引き取り願うよ。もうすぐ仕事の相手が、ここにやって来てしまうんだ」
見えないなにかを回避しなければと、当たり障りのないことを告げてみた。
「そのお方は、女性でしょうか」
「仕事だと言ったろう。女性ではないから安心してくれ」
「男性だとしても、伯爵は相手にすることができるじゃないですか。僕のように……」
ローランドは挑むような視線を飛ばしながら、ワイシャツのボタンを外しはじめる。
「参ったね、どうしたら君を納得させられ――っ!」
胸元までボタンを外したローランドが、左半身を見せつけるように、ワイシャツを大きく開けさせた。華奢な鎖骨の下に、はっきりとつけられた大きな赤い痕を見て、伯爵はひゅっと息を飲む。
雪のように白い肌につけられた、赤い花という淫靡な痕跡――自分を落とすために、故意につけられた痕だとは知らず、目の前に突きつけられた事実を、伯爵はあっさり信じた。
「だ、男爵……。それ、は、本当に…執事殿がっ」
「アーサー卿はご存知でしょう。ベニーは、僕のことを愛してます。僕が喘ぎながら、手淫でいやらしく慰めている姿に、我慢できなかったのでしょう。その想いをぶつけるように抱かれました。長い髪を振り乱しながら、僕の中をぐちゃぐちゃにかき乱し、ここに顔を埋めてイったのです。この痕がなによりの証拠」
「そん、な……」
「綺麗な顔に似合わず、ベニーのモノは太くて大きかったですよ。僕の感じる部分にうまく擦りつけながら、ここぞとばかりに奥を突いてくれるんです。あまりの気持ちよさに、あられもない声を出しながら、何度もイカされちゃいました」
そのときのことを思い出しているのか、ローランドはつけられた赤い痕を指先でなぞりながら、照れたように微笑む。
「…………」
伯爵の視線は、ローランドにつけられた大きな痕に、ずっと釘づけだった。目を逸らせないくらいに、大きくはっきりと示されている抱かれたあとに、胸の中にしまっているローランドへの独占欲が湧きあがった。
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