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抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい82
そうして距離をとろうとしたのに、大きなベッドが伯爵の足を引っかけて、見事にそれを阻む。両腕を上げたままという無様な格好で、ベッドの上へ仰向けになったところを、ローランドは間髪入れずに颯爽と跨った。
「アーサー卿にこうして触れるのは、いつ以来でしょう?」
「ローランド、銃をおろしてくれ。た、頼む!」
両手で構えていたのを右手のみにし、無機質な銃口を喉元に突きつける。刃物で脅されているのと変わらない行為に、伯爵は恐怖に顔を凍らせた状態で、躰をぶるぶる震えさせた。
「僕をいたぶって、楽しかったですか?」
「たたたっ、楽しいわけがないだろ、そんなの!」
慌てふためく伯爵の喚き声が、薄暗い部屋の中に響いた。聞いたことのない怯えきったそれに、まったく反応することなく、ローランドは質問をぶつける。
「口ではそんなことを仰ってますが、とても楽しそうなお顔をしてましたよ」
「それは君を痛めつけると、俺のを締めつけて、気持ちよくなるから…とか」
うるさいくらいの喚き声から一転、蚊の鳴くような弱々しい声で伯爵は答える。
「では僕のをアーサー卿の中に挿れて、何らかの方法で痛めつけたら、すごく気持ちよくなれるのですね?」
ローランドは小さく笑いながら、自身の下半身をアーサー卿のモノに擦りつけた。
「ヒイィッ! なんで勃ってるんだっ」
「好きなお方にこうして跨るのですから、当然のことかと思います。アーサー卿は変わらないのですね」
「こんな状況下で、勃つわけがないだろ!」
「なんだか嘘つきの貴方を示しているみたいで、とても寂しいです」
蔑んだ瞳で見下ろされたせいで、伯爵の中にあるなにかがプツンと切れた。
「ローランド、いい加減に銃をおろしてくれ!」
「嘘つき……」
「嘘など言ってない。君を愛してる! 本当だ」
「この部屋に案内してくれた、貴方の執事が言いました。今日の午前中は来客がないから、ゆっくりしていってくださいと」
「え?」
ローランドの突きつけた言葉に、血の気がさーっと引いていく。
「それなのにアーサー卿は先ほど、来客があると仰った」
「そ、それは――」
伯爵はこの場を何とか取り繕うセリフを考えるが、右から左へと流れていくだけで、口をパクパクさせるのが精一杯だった。
「何度、僕に嘘をつくのですか? 愛してもいない相手に、どうして好きだと言えるのです!」
ローランドは、トリガーと横並びしている安全装置を指先で一緒に引き、セーフティを解除した。カチッという小さな金属音を耳にした途端に、伯爵は一気に取り乱し、上げたままにしている両腕をベッドに叩きつけながら、上擦った声で叫んだ。
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