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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい1
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唐突にみぞおちを殴られた痛みにうんと顔を歪ませながら、ふらついた状態でその場にうずくまる。
体育館と倉庫に挟まれた、奥まっているところでおこなわれているため、誰も助けにはこない。というかそもそも、助けてくれる友人のひとりすら、僕にはいなかった。
「……こ、今月のお小遣いをすべて渡しているので、これ以上は何も出せません」
「だったら、親の財布からくすねてこいよ」
目の前にいるヤツが僕の頭を鷲掴みしながら、蔑むような笑いを頬に浮かべて、俯かせていた頭を無理やりあげさせる。
「金が払えないなら、躰を売って稼げばいいんじゃね?」
3人のうちのひとりが、信じられない提案をしたのがきっかけとなって、誰かに僕を売りつける算段をはじめた。
「へぇ、なるほど。雁首そろえて熱心に話し合うくらいに、彼は高く売れる素質があるんだ?」
背後から突然かけられた言葉に、3人はハッとした顔で振り返った。僕も痛んだところを押さえつつ、その場に立ち竦む敵か味方かわからない人物に目を向ける。
そこにいたのは、随分と体格のいい甘いマスクをした外国人男性だった。日本人とは明らかに違う色の白い肌をしているせいか、くっきりとした二重まぶたの青い瞳と、癖のない黒髪が際立って見える。
初夏で暑くなりかけている季節だと言うのに、黒の長袖のタートルネックと、黒のスラックスといういでたちは、あえて白い肌を隠しているように感じられた。
「誰だ、コイツ?」
「紹介が遅れたね。俺はここの高校に勤める、新任教師の付き添いをしてる者さ。彼が校長に長ったらしい挨拶してる最中に抜け出して、校内をブラブラ散歩していたら、こんなところで君たちとばったり、巡り合わせてしまっというわけ」
外国人らしからぬ流暢な日本語に、すごいなと素直に思った。目をつぶって今の話を聞いたとしても、日本人だと錯覚できるくらいのレベルだった。
「新しく勤める先生って、この状況ヤバくね?」
僕を脅したひとりが尻込みするやいなや、脱兎のごとくこの場から逃走した。それを追いかけるように、残ったふたりも慌てて駆け出す。
「おまえ、いじめられてんのか?」
うずくまったままでいた僕に、わざわざ腰を屈めながら大きな手を差し伸べてくれたので、遠慮なく掴まり、ゆっくり立ち上がった。
「はい。助けてくださり、ありがとうございます」
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