178 / 332

抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい2

 痛めた脇腹を抱えながら見知らぬ外国人に頭を下げると、いきなり頭頂部の髪の毛を摘まれる感覚があった。 「この朱い髪……」  何をされるかわからないので、とりあえず頭を下げたまま、上目遣いで恐るおそる説明してみる。 「これは生まれつきで、染めたものじゃないんです。そのせいで目立つ人に因縁をつけられたりするので、黒く染めようとも思ったんですが、肌が弱くて、それもできなくて」 「そうか」  視線の先にある端正な面持ちの男性は、少しだけ眉根を寄せながら、髪を摘んだ手を元に戻したので、安心して頭をあげた。 「貴方の黒髪が羨ましいです」 「そうかな。外人の象徴といえば、金髪だと思うけどさ」  細長い指で黒髪を梳きながら告げる言葉に、ちょっとだけ笑ってみせた。 「そうですね。ですが青い瞳に黒髪は、新鮮な感じがします」 「にしてもだ、君はこうしていじめられていることを、担任や親は知っているのか?」  腰に両手を当てて告げられたセリフは、僕としては大変答えにくいものだった。 「担任には相談したのですが、僕の態度が悪いからだと言われてしまって、取りあってくれないです。親も同じ感じで……」 「態度が悪いって、何かしたわけじゃないだろ?」 「そうなんですけど」 「狂った学校だな。こりゃ前途多難とみた」  透き通った青い瞳を気難しそうに細める姿を、何の気なしにじっと眺めた。すると僕の視線に気がつき、口の端を綺麗にあげて笑いかけられる。  妙な色気が漂ってくるそれに、胸がドキッとした。 「先輩、こんなところにいた。何をして――」 「ベニーちゃん、やっと来たか。遅かったな!」  僕から視線を外し、後ろを振り返った男性の視線の先には、別の外国人男性がいた。 「わっ……」  傍にいる男性よりも一回りくらい線の細いその外国人は、サラサラの長い白金髪を鮮やかな色合いの赤い紐を使って、後頭部の真ん中あたりに結っていた。こちらに近づくにつれてわかる、光輝きながら揺らめく髪の毛の一本一本のしなやかさに、思わず目を奪われる。 「そちらにいる生徒は、先輩の知り合いですか?」 「いいや、違う。今さっき知り合ったところ。3人の生徒に、寄ってたかっていじめられていたんだ」 「いじめですか、酷いですね。君、怪我はしていませんか?」

ともだちにシェアしよう!