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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい15
「そんなに綺麗でしたか?」
「はい。揺らめく長い金髪と赤いリボンが夕焼けに反射して、キラキラ輝いていました」
「なるほど。私を写真に残しておきたいなんて、言ったりしませんでしたか?」
ズバリと確信をつくことを言って揺さぶりをかけたベニーに、明堂は顔色を曇らせながら首を横に振る。
「ひとことも言ってません。ですから知人がどうしてロレザス先生の写真を撮影しようとしたのか、さっぱりわからないんです」
困惑したような目つきで見つめられても、怯むわけにはいかなかった。
「それも、ただの写真じゃありません。わたしは彼に押し倒された上で、恥ずかしい写真を撮られそうになったんです」
「そんな……。お怪我はありませんか?」
明堂は眉根を寄せて心配する表情を浮かべながら、ベニーをじっと眺めた。
「見てのとおり大丈夫です。武道に心得があるので押し倒されても、抵抗することができたんです」
「そうでしたか、お怪我がなくてよかった」
胸に手を当てて安堵のため息をつく明堂に、意地の悪い微笑みを口元に湛えて、校内で囁かれていることを問いかけてみる。
「男子校ならではなんでしょうけど、私と寝たい生徒がたくさんいるようですね?」
「その綺麗な長い髪と白い肌は女性的ですし、見ているだけでそそられるのかもしれません」
「明堂会長もですか?」
襲う理由を作ったであろう本人に訊ねるのもどうかと思ったが、ベニーとしては確証が欲しかったため問いかけた。
「あえて言うなら、俺の好みとかけ離れているので、ロレザス先生は目の保養という感じです」
「そうですか、それは残念」
ベニーはそう言ったが、口ぶりがまったく言葉の意味をなさないような、冷淡さを与える声色で返事をした。
「残念なんて仰いますが、ロレザス先生の好みは、弘泰なんでしょう?」
「えっ?」
「色目を使われたと、本人から聞いています」
思わぬところから彼の名前が出てきたので、動揺せずにはいられない。
「私としては、色目を使った覚えはないのですが……」
さっきから事実と異なったことばかりを告げられているため、明堂を素直に信用することができなかった。警戒を示すように、ベニーの鼓動が早鐘を打ちはじめる。
「弟は見てのとおり初心で、恋愛経験がほとんどありません。甘い言葉を囁けば簡単に騙されることくらい、経験が豊富そうなロレザス先生なら、すぐにわかるでしょう。教師の権利を振りかざして、生徒に手を出してやろうというお考えなら、今すぐに辞めていただきたい」
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