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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい24
「好っ、ぅはっ?」
唐突な告白を聞いて顔を真っ赤にし、カチンコチンに固まる明堂に、ベニーは白衣が邪魔にならないように颯爽と跨る。
「ロレザス先生……なっ、な、なにを」
「君に嫌がることをする生徒は、どこの誰ですか?」
襲われると思ったのもつかの間、意外な問いかけをされたせいで、瞬きしながらきょとんとした。
「嫌がる、こと?」
明堂の頭の中に、今までなされたつらいことが流れる。あまりにたくさんありすぎて、その映像が途切れることはなかった。
「バーンズ先生から、いじめのことを聞いてます」
「あ……」
「よくある陰湿ないじめから、性的なものまで。君が今現在、一番困っているのはなんですか?」
「いっ、言いたいけど言えません」
震える声で断るのがやっとだった。自分に優しい言葉をかけて近づいてくる人間は、何か裏があり、絶対に信用できない――過去の経験で、そう判断せざるおえなかった。たとえそれが、憧れる先生であっても。
「確かに。私に見下ろされながらなんて、脅迫に近いですもんね」
「違いまっ、そ、そうじゃな、くて!」
明堂は慌てて起き上がり、目の前にある白衣を掴んだ。縋るように自分に抱きつく躰を、ベニーは静かに抱きしめ返す。
「それでは、どんな感じだと喋りやすいですか?」
「えっと……」
ベニーは弱りきった感じで返答した明堂の頭を、利き手でそっと撫でる。
「こうして私の胸に抱かれて、顔をつき合わせないほうが、明堂くんは答えやすい?」
耳元で甘やかに囁かれる状態は、けして落ち着くものではなかったが、面と向かうよりはマシだと思い、小さく頷いてみせた。
「クラスでいじめられているせいで、授業を受けるのもつらいみたいですね?」
「はい。周りからの視線が僕に刺さっているように感じて、いちいち反応しなきゃいいんでしょうけど、どうしても気になってしまうんです。消しゴムひとつ落としただけで、失笑されるとか」
ローランドがメモに書いたのか、クラスでのいじめのことを口にしたベニーに、思いきって打ち明けた。
「クラス外ではどうでしょう。下級生の君を従わせるのに、上級生が暴力をふるうことがあるのではないですか?」
「あります。他にも無理やり……」
「そうですか。それはつらいですね」
重たい口ぶりを聞いて、ベニーはそれを断ち切るように話を進めた。その気遣いに明堂はぎこちない笑みを浮かべながら、明るい口調で話し出す。
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