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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい27
唇に触れたままでいる人差し指を、ベニーの唇がなんの前触れもなく食む。
「あっ……」
意味深にまぶたを伏せながら、ちゅっと音を立てて軽く吸ったあとに、指先をぺろぺろ舐める。たったそれだけのことで、明堂の下半身が熱をもった。
「ベニー、せ、先生っ」
「早く言ってくれないと、君の困ることをしそうです」
舐めていた指先を解放したと思ったら、今度は一気に咥え込む。ぬめりけのある肉厚の舌が、人差し指をなぞるように蠢いた。
「うっ! これ以上は困りますっ!」
変な声をあげそうになり、慌てて静止するしかなかった。頬だけじゃなく躰中のぜんぶが熱くて、自然と息がきれてしまう。
一瞬だけ瞳を細めたベニーは、明堂の顔を見ながら、やんわりと人差し指を解放した。
「だったら、早く言ってください」
充分に湿っている人差し指を握りこみ、上目遣いで傍にある顔を見やる。
「や、やりたいこと、は、その……。キス、したい、です」
「いいですよ。いつでもどうぞ」
小さく笑ったあと、静かに瞳を閉じてキスされる体勢を作った姿に、明堂はぶわっと緊張し、握りしめる拳に汗をかいた。
「あのすみませんっ、は、はははじめてなので、失敗するかもしれないのですが」
「失敗したとしても、私は痛くもかゆくもありません。君のやりたいことを、すべて受け止めてあげます」
その言葉に勇気をもらい、しっとり汗をかいた手でベニーの両肩に触れて、躰が逃げないように固定した。そのまま顔を寄せて息を止めつつ、目の前にある唇に自分の唇を押しつける。
時間にしたら、数秒だけの接触――本当はもっと触れていたかったのに、恥ずかしさや緊張などで継続することができなかった。
「ぁ、あり、ありがとうございましたっ。こんな僕のお願いをきいてくれて」
「弘泰、こちらこそありがとう。君のはじめてをもらえて、とても嬉しいです」
おどおどする明堂に、ベニーは手を伸ばして頭を優しく撫でた。
「ベニー先生、ごめんなさい! 本当は嫌だったのでは……」
「え?」
頭を撫でられながら上目遣いで目の前を見た明堂は、慌てふためきながら、そっとベニーの頬に触れる。
「嫌なことをしてしまって、すみませんでした」
ベニーは触れられてはじめて、涙していることに気がついた。
「これは嬉し涙です。大好きな君からのキスが、嫌なわけないじゃないですか」
「嬉し涙?」
「私としては、待ち望んでいたのです。ここに来てから君に逢う時間を作れずに、相当やきもきしていましたしね」
「ベニー先生……」
「弘泰、君が好きです。あとどれくらい好きと伝えたら、私のことを好きになってくれますか?」
切なさと慈愛に満ちたまなざしに見つめられた明堂は、対処に困り果てた。愛の告白と同時に、この状況を覆すすべを知らなかった。
ベニーの頬に触れた手を退けたいのに、とめどなく溢れる涙のせいで、てのひらを使って受けとめることに必死だった。
「私の涙を止めたければ、もう一度キスしていただけませんか?」
その要求に明堂は――。
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