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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい32

「先生、僕を抱いてください。あのときみたいに」 「だ、駄目です。私は勤務中ですし、君もあと少しで授業がはじまるじゃないですか」  壁掛け時計に視線を飛ばして時間のなさを伝えたというのに、抱きついた腕の力をさきほどよりも強めながら、目の前で首を横に振る。 「僕はベニー先生が好きです。一緒にいるだけですべてを安心して、ゆだねることができるんです。先生は僕を傷つけたりしない人だとわかっているから……」  明堂はしっかりと目線を合わせながら想いを告げて、押しつけるように唇を重ねた。前回したような触れるだけのキスではなく、すぐさま舌を侵入させて、理性を崩すように口内で蠢く。おぼつかないその動きは、焦らされているとしか思えないものだった。 「んぅっ」  ベニーとの身長差を埋めるために、明堂の両腕が首に絡められた。ぐいっと引っ張られながら同時に深くくちづけられて、いいようのない悦びに躰がずぶずぶと浸食されていく。 「ひ、ひろ、やすっ」  喘ぐ呼吸と一緒に、明堂の躰をまさぐった。ブレザーの隙間から入り込んだ片手はワイシャツの上からすぐに突起を見つけ出し、感じるように優しく捏ねる。瞬く間に硬くなった手ごたえを指先に感じて、徐々に力を強めていった。 「ベニーっ、せんせぇっ…」  明堂は唇からヨダレを滴らせながら、下半身をベニーのモノに擦りつける。熱り勃ったそれは布地の上からでもわかるくらいにビクビクしていて、ベニーの責める手がますます止まらなくなった。 「私のすることは、そんなに気持ちがいいのですか?」  いつもより低い声色で耳元に囁くと、頬を赤く染めあげて小さくこくんと頷く。初心なその様子を目の当たりにして、鼓動が痛いほど速くなった。 「す、好きな人に、されるのは、こんなに感じてしまうことを、はじめて、し、知りました。先生にもっと触れてほしい…です」  ベニーの空いた手がスラックスの上に音もなく伸ばされ、双丘の微妙なところを強くなぞりはじめた。首にかけられている明堂の両腕の力が抜けて、目の前の肩を掴んだ。 「先生っ、変に、なりそぉ。服の上からなの、に、すごく感じて、今すぐに…欲しくなっちゃう……」  小さく身震いした明堂の躰が、一気に硬直した。ベニーはそこに不自然さを感じて、両手の動きを止める。 「どぉしてやめるんですか? もっと感じさせてください、ベニー先生ぇ」 「口調が変わってますよ。君は誰なんです?」  耳元で指摘してやると、小さな舌打ちが聞こえた。 「なぁんだ、即バレとかつまんねぇの」  ベニーの束ねている長い金髪を手荒に掴み、顔を無理やり引き離してから、後退りして距離をとる。

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