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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい48

「……僕よりも最下位になる方法って、なんでしょうか?」 「そんなの、アイツらが気に入らないことをすれば、一発じゃね?」  カースト上位者を顎でさしながら、明堂の問いに答えた生徒は、小馬鹿にするように笑いかけた。 「そんなことよりも、とっとと宿題写せって。どんくさいな」 「あ、うん。ありがと」 「……俺も明堂に優しくして、ロレザス先生の名前呼びを許可してもらおうかな」  いそいそ宿題を写していると、あとからやってきた生徒がぽつりと零した。 「なんだよ、山崎。やっぱりロレザス先生と、お近づきになりたかったのか」 (やっぱりベニー先生は、人気があるだな……) 「岡田みたいに、わざと怪我を作って、保健室に顔を出すような真似はしないけどね」  その言葉で、明堂は当時のことを思い出す。不自然すぎる怪我に、ベニーが困惑した表情で治療をしているのを、整理を頼まれた棚から時折覗き見ていた。 「でもそのお蔭で、名前呼びの情報をゲットできたんじゃないか」 「まぁな。それに岡田ひとりよりも、俺も一緒に仲良くなったほうが、変な目で見られにくいと思うんだ」 「いやいや、ふたりいっぺんのほうが目立つだろ」 「あのぅ、僕と仲良くならないほうが、いいと思いますけど」  カースト上位者の指示することには、けして逆らわない。絶対的に服従するという暗黙の取り決めがあるため、睨まれたら最後、徹底して虐められるので、明堂は助言したつもりだった。 「なんだよ。明堂ってば、ロレザス先生を独り占めにしようと考えてるのか?」 「そうじゃなくて……」  宿題を写す手を止めたら、いきなり胸ぐらを掴まれた。 「明堂は黙って、俺らと仲良くつるめばいいだけだろ。なんで嫌がるんだよ」 「岡田、やめろって。そんなことしたら、ロレザス先生の名前呼びの件が、きれいさっぱり白紙になるぞ」 「だって明堂が……」  あとから来た生徒が明堂を掴む手を外し、わざわざ握手する形にうまいこと変えた。 「明堂はどんくさい上に、言葉が足りなすぎるところがあるだろ。アイツらに睨まれてからというもの、まともに話をしているのを見たことがないしな。それくらい、わかってやれって」 「山崎くん――」 「ということで、俺も岡田と一緒に仲良くしてほしいんだけど、これからよろしくな!」  最初はふたりと仲良くなっただけだったのに、気がついたらクラスの半数と、話すことができるようになったのだった。

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