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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい52

「君の躰は、マモルとひとつということを、どうか忘れないでください。今まで弘泰の嫌なことを、彼が我慢し続けてくれた経緯があるでしょう?」 「そうですけど……」 「理解が早くて助かります。まずは私が、マモルと話し合いをしてから」  言いかけた言葉を止めるように、ベニーの胸を明堂が殴った。強く殴られたわけではなかったが、暴力的なことをこれまでしたことがなかっただけに、ベニーは驚きを隠せず、目を見開いたまま、明堂を見下ろした。 「ベニーがマモルと話し合いをしなきゃならないって、そんなの嫌です」 「弘泰っ……」 「僕以外の人と喋るベニーの心は、マモルに向くわけでしょう? マモルのことを、好きになるかもしれない。だって見た目は僕なんだし」 「見た目で、君を好きになったわけではないですよ。落ち着いてください」 「だったら僕とマモル、どっちが好きなんですか?」  直視しながら訊ねられたセリフに、ベニーはすぐに答えられなかった。息を飲んだ状態で、瞳を右往左往させる。 「なんで、なにも言ってはくれないの? 僕が好きだと言ってください!」  明堂の怒号は、保健室の中に響き渡った。同時に、ベニーの心にも悲しく響いた。 「私は弘泰とマモル、ふたりとも好きなんです」 「そんなの嫌です! 僕だけを見て、ベニー」  対処に困ったベニーの頬を両手で掴み寄せ、強引に唇を重ねる。 「ンンっ!」  激しく求められることは、本心としてはとても嬉しかった。それがマモルにたいしてのヤキモチからきていることがわかっていても、ずっと片想いをしていただけに、ベニーは抵抗する気力が起きなかったのである。 「ベニー、んぅっ…好きぃ」  角度を変えて口づけるたびに囁かれる言葉は、甘やかにベニーの躰を熱くしていく。本能に突き動かされようとしている自分を、理性のあるもうひとりのベニーが、遠くから見ていた。  このままではいけないと、止めに入りたいのに、それすらもできず、嬉しさを秘めながら眺めてしまう。 「ひろや、すっ……」  ベッドに押し倒すべく、明堂の肩に手をかけた刹那、掴んだ躰が大きく震えた。

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