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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい58

 考えついたことを素直に告げた、ベニーのセリフを耳にしながら、マモルは恥ずかしそうな表情を浮かべて躰から手を外し、恐るおそる距離をとった。 「おまえの場合、全然無意味じゃないだろ」 「しょうがないじゃないですか。好きな相手に愛撫されて、感じない人はいないと思います」  ふふっと笑って、勃ってしまった自身の下半身に触れる。丈の長い上着を羽織っていたので、傍から眺めるだけではわからないが、抱きしめあっていた先ほどの格好では、マモルにバレバレだった。 「愛撫じゃねぇって! あれはおまえの血を吸っただけだろ」  ぶわっと頬を真っ赤に染めたマモルに、ベニーは離された距離を一歩だけ近づけた。 「私の血を吸っても無意味になることくらい、マモルならわかっていたでしょうに」 「試してみないと、わからないこともあるし……。わざとじゃねぇよ」 「毎回あんなふうに、血を吸っていたのですか?」 「だって、俺の唾液で傷口が塞がるみたいだから、ああしないとダメだと思って」  マモルは知っている事実を口にしつつ、近づけられたベニーとの距離をとろうとしたのに、背中に壁が当たった。狭い保健室の中では、それ以上の逃げ場はなく、目の前にベニーは迫る。 「妬けますね。そうしなければ、君が生きれないことくらいわかっているのに、妬かずにはいられません」  掠れた声を認識したときには、ベニーはマモルを抱きすくめていた。さきほど吸血したマモルと同じように首元に顔を埋めて、やわやわと甘噛みする。 「ちょっ、な、なに……を」  ベニーの舌先が、肌をゆっくりなぞる。まるで、マモルを味わうかのように。 「ぁっ、やめ、ンンっ!」 「ね、感じるでしょう?」 「こんなの卑怯だぞ!」 「最後に、マモルの感じてるところを見たかったんです」  寂しげな口調で告げた言葉を聞いた途端に、マモルは顔を伏せた。 「俺の顔は、弘泰と同じだろ……」 「確かに顔は同じですが、表情が微妙に違うんです。それを目に焼きつけたかった」  抱きしめた両腕に力を込めて、マモルがこの場にいるということを確かめる。 「君はマモルという、ひとりの人格です。ローランド様の記憶をもつ、この世で貴重な存在なんですよ。弘泰と同じように、私が愛すべき人なのです」 「ベニー、俺は……、俺はおまえが――。嫌い、だ!」

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