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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい66

「……だって僕の躰は兄さんだけじゃなく、他の人も触れてるでしょ。だから、ベニーは嫌かもしれないけど」 「そんなことを言ったら、私のほうがもっと穢れてます」 「ごめんなさい。そんなつもりじゃなくて」  男娼時代のことを口にさせてしまったため、弘泰は沈んだ声で謝罪した。 「わかってます、君は優しいですし。昔のことで、変に気を遣ってほしくありません」  ベニーはいたって明るく答える。弘泰は縋りついていた腕から慌てて離れ、しっかり顔を上げた。自分を思いやって、わざと明るく振る舞っているのを確かめるために。 「でも……、ベニーを傷つけてしまったんじゃ」 「これくらいで傷ついていたら、弘泰のことを追いかけられなかったと思いますよ。それよりも住宅街に入ったら、道案内しっかりお願いしますね」  宥めるように頭をぐちゃぐちゃに撫でられたお蔭で、弘泰の落ち込んでいた気持ちが浮上した。「もう大丈夫です」と言ったというのに、いつまでも頭を撫で続けるベニーの手を取り、ぎゅっと握りしめる。 「そこの十字路を右折した先にある、左側の三軒目の赤い屋根の家が自宅です。車はガレージに停めてください」 「わかりました。案内ありがとうございます」  運転の支障になると思い、握りしめていた手を放した瞬間、何の前触れもなくベニーの手が弘泰の首筋に触れた。 「つっ!」  肌がぞわっと粟立つ感覚に、思わず声をあげてしまう。  顔を真っ赤にしたまま固まる弘泰をちらっと見、ベニーは意味深に微笑みを唇に湛えた。 「こんな僅かな接触だけで甘い声をあげるのなら、最後までいたしたときは、さぞかしいい声が聞けるのでしょうね」 「違いますっ。これはベニーの手がいきなり触れたから、驚いて出してしまっただけなんです」  照れの混じった弘泰の弁解を可愛いと思いつつ、車をスムーズにガレージに停車させる。 「それでは驚いたせいで出たものじゃない声を、さっそくご自宅にて拝聴しましょうか。ちなみに容赦はしませんよ、いいですね?」  エンジンと止めた途端に告げられた言葉に、弘泰は赤面したまま、口をパクパクさせるのが精一杯だった。

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