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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい68
ボタンを外してブレザーを脱がしかけた手が、ぴたりと止まる。
「ベニー?」
閉じていた目を開けた瞬間、下半身に手を伸ばされ、ぎゅっと掴まれた。カタチの変わったそれを爪を立てて強く握られることは、いつもなら痛くて嫌なことのひとつだった。
「あ……っは…ぁ、ああっ!」
兄にされた行為と同じことをされているのにも関わらず、ベニーの手からは痺れるような快感だけがあった。なけなしの理性を崩すそれが躰を駆け巡り、自然と両膝を擦り合わせてしまう。
「んんっ……ぁっ…っぁあ」
あられもない声をあげないように奥歯を噛んでみても、それを察知して手の動きを変え、僕自身をさらに気持ちよくした。
「やぁっあっ…べ、ベニーぃっ」
「布地越しでも伝わってますよ。君がイヤラしい染みを、たくさん作っていることを」
「くっ」
告げられたセリフに恥ずかしさを感じ、顔を真っ赤にして固まる弘泰を見ながら、ベニーは綺麗な二重まぶたを細めた。
「誰が弘泰を、そんな躰にしたんでしょうね」
「それは大好きなベニーが」
触れるからそのせいでと言いかけた途端に、ワイシャツを手荒に引き裂かれた。ビビッという生地の破れる音が、室内で妙に響いた。
「違います。君を淫らにしたのは、お兄さんのせいでしょう?」
「ちがっ」
「先ほど玄関で抱きあげただけで感じて躰を震わせたり、今もこうして布地越しで軽く触れているだけなのに、奥が疼いていますよね? 君はまだ未経験だというのに……」
僕自身を掴んでいた手が移動して、指摘した部分に触れる。
「ひぁっ」
スラックスと下着が間に挟まっている部分。そこを強くなぞられることに違和感はまったくなく、いいようのない快感を覚えて腰を上下させてしまった。
「マモルの記憶が君に宿った時点で、躰にもその影響が出るはずです。保健室で触れたときよりも、格段に感度が上がっていますしね」
「あっ、あっああっ…んあっ!」
「もっと早く出逢いたかったというのは、我儘なんでしょうね。私の手で最初から教えて差しあげたかった……」
快感に打ち震える弘泰の躰を、ベニーは両腕でぎゅっと抱きしめる。荒い呼吸をそのままに抱きしめられるだけで、躰は乱れているのに、不思議と心が穏やかになっていくのを感じた。
「僕も早くベニーに逢いたかった。綺麗な僕をベニーにあげたかったのに」
「君は充分綺麗ですよ。それにこれから弘泰が経験したことがないところを、探し当てる楽しみがあります」
ベニーは抱きしめた腕を緩めて、弘泰の耳元で囁いた。ふぅっと吐息をかけてから、耳朶を甘噛みする。
「ンンっ!」
「こうしてひとつひとつ探していきますので、覚悟してください」
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