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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい77

「おまえが学校に来たことは、直接マモルから話を聞いた」  過去の出来事を脳裏に思い描いていたところで、不意に話しかけられた。気持ちを切り替えるべく、背筋をぴんと伸ばしてから口火を切る。 「マモルの存在をご存知だったのですね。彼は私のことを酷く嫌っていましたから、憂さを晴らすように、話が止まらなかったのではないですか?」 「嫌っていたというか、嫌い嫌いも好きのうちだろうって、すぐに気がついた」 「好きのうちなんてまさか。マモルは私に触れられることすら、相当苦痛だったのでしょう。かなりイヤそうにしていましたが――」  言い終えてから、やっとお茶をいただいた。矢継ぎ早に繰り返される会話により、まったく気が抜けない緊張の連続で、口の中がかなり乾いていたため、染み入るように潤っていくのがわかった。 「前の記憶があるからこそ、おまえを慕っていた貴族の念に引きずられるのは、火を見るよりも明らかだ。ボロボロな状態の弘泰の躰を守るために、嫌いな素振りをしていたにすぎない。本当は出逢えた喜びで、いっぱいだったと思う」 「マモルがそんなふうに……」  告げられた意外な言葉に、ベニーは嬉しさを噛みしめた。マモルからのあからさまとも言える拒絶で、心が折れそうになったことすら、今は懐かしく思えた。瞳を細めながら、もう一口お茶を飲んだときに、さきほどよりも穏やかな声色で話しかけられる。 「弘泰の中でマモルが出現したとき、すぐに様子が違うことに気がついて話しかけた。互いにウマが合うせいか、親子以上に仲良しになった。くだらない話もよくした」 「そうでしたか」 「悔いが残る死に方をしたからこそ、現世ではそんな思いをしないように生きたいんだと言ってた。幸せな余生を送りたいという俺の考えは、贅沢だと指摘されて」 「彼の前世に、私が悔いを残すようなことをしでかしたから……」  湯飲みを手放し、少しだけ俯く。 「だがおまえはあのときのおこないについて、悔いはないんだろう?」  訊ねられた問いかけが見えない文鎮となって、心の中に重しをかけた。だからこそ安易に答えてはならないと思う一方で、ローランドが伯爵を射殺したときの心情が甦る。

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