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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい80

「違う世界から来たおまえにつきまとわれた時点で、弘泰は厄介事に巻き込まれてしまったというのに。だからこそ、笑わずにはいられない!」 「そんな……」 「事実を受け止めろ。しっかり受け止めた上で、これからのことを考えなければならない。これは俺だけじゃ無理な話さ」  弘泰の見守り人は目じりに浮かんだ涙を拭い、気だるそうに大きなため息を吐いた。 「自分の恋を叶えるために、仕える主と恋敵を間接的に殺めた極悪人という認識をしていた。おまえの見守り人から人となりを聞いても、正直その考えは揺るがなかった」 「そんな極悪人に、弘泰はやれないということですよね」  極悪人と称した相手を前に、嫌々ながらもきちんと向き合って話を聞いてくれるだけでも、大変ありがたいと思った。 「やりたくないが、はじまってしまった恋の炎を鎮火させるほうが、相当骨が折れる。おまえに抱かれて、弘泰は堕ちるところまで堕ちただろう」 「…………」  快楽に弱い相手を堕とすための最終手段をとったことが、弘泰の見守り人に隠し通せるはずがないのはわかっていた。しかもこんなタイミングでバレるなんて、予想していなかっただけに、ベニーとしても返答しづらい。  細身の躰を丸めるように肩を竦めて、神妙な面持ちのまま耳を傾ける。 「マモルが消えた今、弘泰の中に前世の記憶も甦り、おまえに対する愛おしさみたいな感情が溢れているのがわかる。暫くはふたりの付き合いを様子見してやるから、今日みたいな暴走はほどほどにしてくれ。以上だ」 「お付き合いしてよろしいのでしょうか?」 「本当はすごく嫌だ、とっとと別れてくれと思ってる。だが弘泰の気持ちを考えると、そうもいかないだろ……」  ベニーは慌てて椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。 「ありがとうございます。ご指摘を受けたことについて注意しながら、弘泰と付き合っていきますので、ご指導のほどよろしくお願いしま――」 「指導なんて進んでしたくないものだな。他に聞きたいことがあれば、おまえの見守り人に話を聞け。とはいえ、時間があればいいが」  途中で話を遮った弘泰の見守り人を、下げていた頭をあげたベニーが見つめると、バツの悪そうな表情になった。 「時間があればというのは……」 「俺から話すことはない。本人に直接聞いてくれ」  訊ねた言葉を受け付けないと言わんばかりに顔を背けられてしまったせいで、疑問が胸に残る状態で、弘泰の家をあとにしたのだった。

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