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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい82

***  ベニーは指定された時間よりも、早めに到着した。  聞きたいことが山のように頭の中に溢れ、どれから言葉にしていいかわからない。それを吟味する時間をとるために、早めに来たのだった。  屋上から見慣れた景色を一望する。  愛する弘泰がいるこの世界に転移したことについて、後悔の念はまったくない。自分が一途に愛した魂を、見守り人と一緒に追いかけた。ペナルティが与えられることを考えず、迷いなく追いかけた結果が、これから明かされる。  そう思い至ったとき、重い扉の開く音が耳に届いた。 「ベニーちゃん、おはよ!」  背後から聞き慣れた声がしたと思ったら、結んでいた長い髪が躰を覆う。振り返ると、髪を束ねていた赤い紐をローランドが手にし、遊ぶようにくるくる振り回していた。 「先輩……」 「弘泰と両想いになったんだから、いい加減に長い髪を切れって。そのほうがカッコイイと思うぞ」 「事後処理は終わったのでしょうか?」  ベニーは強請られたことをスルーし、ローランドに向かって核心に迫った。 「弘泰パパから、どこまで聞いたんだ?」 「なにも教えてはもらえませんでした。聞きたいことは、先輩に直接聞くように言われて」 「チッ、頭の固いヤツ。言伝を頼んだのに」  眉根を寄せながらベニーの隣に並び、注がれる視線をやり過ごすように、柵の外を眺める。 「どういった言伝ですか?」  こわばった声が、ベニーの緊張感を表していた。 「俺がいなくなる代わりに、弘泰パパがベニーちゃんの見守り人を請け負うことになった。どうせ両想いになったんだから、一緒に見守ってもらってもかまわないだろ」 「私の監視を辞めて、先輩はどこに行くというのです?」 「…………」  空色の瞳は相変わらず逸らされたままだったが、手にしたベニーの赤い紐を強く握りしめたことで、まだなにかを隠していると確信する。 「ここまで一緒に、頑張ってやってきたじゃないですか! 私は必ず弘泰と添い遂げます。間接的に人を殺めてしまったから、困難はつきまとうでしょう。それでも私は――」  声を荒げながらローランドの両肩を掴み、強引に自分に向けさせた。それなのに、目の前の視線はあさってのほうばかりを力なく彷徨う。 「悪い。ベニーちゃんの幸せな姿、見届けることができない」 「理由を教えてください。このままでは納得できません!」  自分を見ようとしないローランドに、苛立ちが募っていった。ベニーは掴んでいる肩を揺すって、何度も教えてくれと懇願する。

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