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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい83
「お願いです。なにもわからないまま、先輩とお別れしたくありません……」
ベニーが涙声になりかけたのを聞いて、まぶたを伏せたローランドが重たい口を渋々開く。
「実のところ……異世界に転移することは、余程の理由がない限り、上の規律で駄目なことになってる」
「それでも私たちは、3回も転移しました」
「俺は無駄に長く生きてる。その生命の長さを元手に、異世界転移に対する懲罰の帳消しを頼んだ」
信じられないセリフの羅列に、ベニーの頭の中はクラクラした。懲罰という言葉が、鼓膜にこびりつく。その原因を作った自分の過ちに、青ざめるしかない
「なんてことを……。だってそれは、私の我儘からはじまったことなのに」
「ベニーちゃんだけじゃなくて、俺の我儘も含まれてるんだ。最初の2回がそれでさ。弘泰がどこにいるのか、最初からわかってた」
「どうして、そんな無駄なことをしたんですか?」
自分の我儘をないものにすべく、ローランドが嘘をついているのではないかと、咄嗟に考えつく。
「ベニーちゃんの容姿や想いの強さを考えたら、弘泰とすぐに両想いになるのがわかる。そうなったら俺は、おまえの傍にいられなくなる。ベニーちゃんと離れたくないことは、俺の我儘だろ?」
「ローランド……」
ベニーは肩に置いてる両手を、力なく外した。
弘泰と少しでも早く出逢い、互いの想いを強固なものにすれば、自分だけじゃなくローランドの来世が安泰になるのは確実だった。それなのに、あえてしなかったことについて、抗議ができない。
「ベニーちゃんの口から俺の名前が呼ばれるの、なんか変な感じ」
ローランドの離れたくない気持ちは、どんな種類のものなのか――ベニーは過去から現在までのやり取りを頭の中で思い出し、それを導き出そうとした。
そして相変わらず、視線を合わせようとしないローランドの心情。それがどのような気持ちなのかを考えるだけで、胸が軋むように痛んだ。
「……いつからなんですか、先輩が離れたくないと思うようになったのは」
ふざけながら誘いをかけても、忌々しげに顔を歪めて、堂々と断り続けられたため、離れたくないという言葉がローランドの口から出るとは、思いもしなかった。
「ベニーちゃんが想像するような感情じゃない。なんて言うかな、親心みたいな感じ。赤ん坊の頃から知ってるんだから、そう思って当然じゃね?」
肩を竦めながら告げられたセリフに、ベニーは無表情で答える。どうしたらローランドが心の内を晒してくれるだろうかと、必死になって考えた。
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