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抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい6

 ベニーを思ってかけた言葉なのに、執行人の声からは、苛立ちを含んだ冷たさしか感じられなかった。  目の前で悲しげに瞳を揺らめかせながら、一歩ずつ俺から遠のく愛しい男に向かって、にっこり微笑みつつ話しかける。 「ベニーちゃん、必ず幸せになれよ。約束してくれ」  これから先、俺が見ることのできないベニーの未来が、輝きに満ち溢れる幸せなものになってほしいと切に願った。 「そんなことわざわざ言われなくても、きちんと守ります」  長くて綺麗な白金髪を風になびかせて、しっかりと約束されたセリフは俺にとって、とても嬉しいものになった。 「いいね、その塩対応。そうでなくちゃな。だから愛してしまったんだ……」 (もう思い残すことはない。これで終いだ――)  ずっと隠していた想いを告げたら、ふっと躰が楽になった。今まで背負っていた重たい十字架を、あっけなく下ろした気分だった。  おかげで心の底から、笑って死ぬことができる。 「ローランド!」  パンッ!!  ベニーの呼びかけをかき消す執行人の手拍子が、振動を伴って辺りに響き渡った。その波動がきっかけとなり、漆黒の手袋が霧状となって、渦を巻きながら手から離れていく。その霧は渦を増して俺の躰を覆い隠し、一瞬で炎に変化した。  目の前に広がる紅蓮の炎――その向こう側には、両目からぼろぼろ涙を流したベニーが、食い入るようにこちらを見ていた。まるで俺の最期を、しっかりと看取るように。 「こんな最期なんて、そんなの……」 「ベニーちゃん泣くな。大丈夫、熱くない。苦しくないから」  俺はいつものように、したり笑いをしてみせた。全然辛くないことを示したというのに、ベニーは心配そうに見つめ続ける。そのうち首を横に振りながら、もの悲しげに顔を歪ませた。  目に眩しく映る紅蓮の炎は、足先から徐々に躰を焦がし、握りしめたベニーの赤い紐以外、すべてを焼き尽くしたと思われる。  愛した男に見送られた俺の最期は、とても幸せに満ち溢れていたが、俺の気持ちを知ったベニーはきっと、これまでのことを後悔するだろう。そのことによってベニーの心の片隅に、俺の存在を残すことができて、実は満足だった。だからこそ、心置きなく旅立てた。  このあと、俺がどのような人生を送るのか――辛いものになることがわかっていたが、それ以外はまったく予想だにしていなかった。

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