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抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい8
俺と同じく全身が真っ黒なソイツは、何度か瞬きをしたあと、長いくちばしで攻撃を仕掛けてきた。突っつかれないように上手くかわして反対方向に逃げたが、黒いヤツは俺の動きを読み、飛んで先回りする。
(くそっ、腹が減って動きたくないのに! これじゃあ、ヤツの餌になっちまうだろ)
俺は全身の毛を逆立てながら、攻撃を仕掛けてくるくちばしにパンチしてみたが、まったく効いていないらしく、ひょいと簡単にあしらわれた。
「こんなところでこんなヤツに殺られるくらいなら、あのまま大人しく、箱の中に閉じこもっておけば良かった……」
観念して攻撃を止め、身体を縮こませた俺を見た黒いヤツは、喜ぶように目の前で大きく羽ばたいて、ギャーギャー喚きたてた。
「こらー!」
すると遠くから誰かの怒鳴り声が聞こえるやいなや、黒いヤツに向かって手が伸ばされる。突き出される手を退けるように、黒いヤツはあっけなく飛び去って行った。
「クロネコちゃん、大丈夫? 怪我してない?」
しゃがみ込んだ朱い髪の人間は、心配そうな顔で俺を手の中におさめた。伝わってくる温もりのおかげで、ちょっとだけ安心できた。
「すごく小さいな。どこから来たの?」
俺を手にしたまま立ち上がり、どこかに向かう。そして硬そうな箱を開けて中に入り、座ったと同時に朱い髪の人間の膝の上に載せられた。
「ベニー、いきなりごめんなさい。このコがカラスに突っつかれてるのが、偶然目に留まったんです。この体の小ささは、生まれてそんなに日が経ってないですよね」
俺を膝に乗せたまま説明する朱い髪の人間の視線を追うと、横にいる髪色の綺麗な人間と目が合った。その瞬間に表現できない不安が胸の中にぶわっと廻った。それに抗わなくてはと、毛を逆立てながら唸ってみせた。
さっき出逢った黒いヤツと対峙したときとは種類の違う不安に、身体が震えそうになる。
「クロネコちゃん、ベニーは優しい人だよ。怒らないで」
朱い髪の人間が宥めるように、俺の顎の下に触れて撫で続けたが、そんなことでは不安な気持ちは紛れることはなかった。目の前にいる髪色の綺麗な人間から、どうしても視線を外せない。
「弘泰、その猫、怪我はしていませんか?」
「ちょっと待ってください。どれどれ」
朱い髪の人間は、唸ったままでいる俺の身体を膝から抱き上げ、目の前に掲げた。
「私に貸していただけませんか?」
俺が唸りながら怒っているというのに、顔の前に大きな手が差し出された。
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