15 / 40

第15話

「……!!……っひふみ!!」 オレは全身濡れていた。 ……濡れていたのは、オレの冷や汗だった。 「一二三、大丈夫……じゃないよな?」 「あー、ダイジョーブ」 「魘されてた。……あの日の夢か?」 「オレっち、見た目も記憶力も良いから。モテちゃうのは罪だなぁー」 オレは前髪を掻き上げて溜め息を吐いて、愛しの独歩を安心させるために笑った。 けどそれは彼には効かなかった。 「あのとき……俺が学校に戻らなかったら、一二三は。……お前が女性恐怖症になったのは俺がお前を一人にしたからだ。俺のせいだ、俺のせい俺のせい……」 寧ろ追い詰める材料にしかなってなかった。 元々ネガティブな独歩は、この事があってから余計に自分を責めるようになった。 「どっぽちんのせいじゃないっしょー?それに今もこうしてオレっちは、どっぽに護られて生きてんじゃん。どっぽがいなかったら、オレっち何も出来てないよ」 オレが守りたかった愛しい独歩に、オレが護られている。 スゴく情けない現状だった。 「それはない。俺がこうしてこの街に居れて、ここに帰ってこれる場所を作ってくれたのは一二三だ。俺の安月給でこんなマンションには住めないからな」 「じゃ、様々ってことにしよ?どっぽちん」 すると独歩は考え出した。 「いや……少し、と言うかだいぶお前には負担をかけてるような気がしないでもないかもしれない。炊事洗濯もお前がやってるし。給料が高いのも家に入れてる金も貯金も一二三のほうが上だ……」 そんなことどうでもいいのに。 オレは独歩が居ればそれだけでいい。 あと、接待で悪酔いして帰って来た独歩とエッチ出来ればいい。 でも、……オレは夏のこんな日に何か出来ることがあれば……。 「ならさ、どっぽー。オレっちが魘された日にしたいことがあるんだけどね」 「……なんかあまり良い予感はしないが、俺が出来ることはする気持ちはある」 オレは笑顔で独歩に言い放った。 「どっぽ、ヌキっこしよー?」

ともだちにシェアしよう!