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第22話
「どっぽちん、おまた!!」
高校一年の初夏のこと。
あまりにも過ごしに日で、俺は怠さに机に突っ伏していた。
「……どっぽー、寝てんの?」
返事をするのも動くのも億劫で、俺は黙って動かないでいた。
すると一二三は何を思ったのか、俺の唇に己の唇を重ねてきた。
一二三の行動に驚きを隠せず、俺は目を見開いてから引いた。
「……ひふみ?!」
「やっぱりどっぽちん起きてた」
「おまえ……、なにしてっ」
「ファーストキスは済ませておきたいっしょ。だったらどっぽがいいなぁと思って?」
「……俺は一二三の彼女じゃない」
俺は焦って言ったのに、一二三は笑顔でこう答えた。
「独歩はオレの『親友』。他の何でもないよ」
一二三の目は笑っていなかった。
『親友』というのは嘘だ。
このときに俺は『一二三は俺を恋愛対象として見てる』ことに気付いた。
そして『俺は一二三が好きだったんだ』とも気付いた。
それから一二三が怖くなった。
いつ好きだと言ってくるか、その告白が怖かった。
と、同時に好きだと言ってくれるのを待っている自分がいた。
価値のない俺が一二三に必要とされているのなら、自分が生きている価値が見出だせる気がした。
一二三に好きだ告白されるのが怖い俺と、好きだと言われたい俺。
矛盾した精神は自分が臆病で弱いからだ。
『オレっち、やっぱりどっぽちんが好きだわー』
『どっぽー、やっぱり持つべきものは親友っ。大好きだー』
度々調子よく好きだと言う一二三に俺は内心心臓が破裂しそうになったが、目が真剣でないことに気付くと安堵した。
けど、俺はファーストキスを奪っていった一二三の笑っていない真剣な目が忘れられずに、大学生になった。
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