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第2話

 順序立てて、お話しするべきでした、申し訳ありません。そうなのです。折りしも旦那さまの居室に鎮座まします(くだん)の三角木馬に騎乗しております最中なのです。  両の(かいな)は、後ろ手に縛られています。  馬具でいえば(あぶみ)に足を載せ、その足は、木馬の胴体をくぐらせた細引きで結わえつけられています。  ことほどさように(ばく)されておりますゆえに、ろくすっぽ身動きがとれません。  付け加えますならば、ずり下ろされましたお仕着せの洋袴(ずぼん)が足首でたぐまっております。フランネルの黒い下衣が床の上でとぐろを巻くさまは、蛇の抜け殻が草むらに転がっておりますところにそっくりでございます。  かように肌もあらわな下肢とはあべこべに、襯衣(しゃつ)(ぼたん)は衿元まできっちりと嵌まっております。しかも、洋袴と対をなすチョッキを着用におよんでいるのです。  その、ちぐはぐな(なり)が我ながら破廉恥きわまりなくて……おまけに壁一面にはめ込まれた鏡を介して、あられもなく腰を打ち振るさまを目の当たりにすることになるのです。襯衣の裾がはためきますたびに、ぬれぬれと穂先が泣き濡れる茎が見え隠れいたします。  実に、(みだ)りがわしい眺めです。  目のやり場に困ります。なのに魅入られたように、股ぐらを見つめてしまうのです。  ぷくり、ぷくりと透き通った雫が、穂先にのべつ露を結びます。その、春画のごとき光景についつい目を奪われますと、こりこりにしこった乳首の影が襯衣に映ります。  浅ましいことです。  顔から火が出る思いがいたします。  それでいて淫奔ぶりは、とどまるところを知りません。何を隠そうむき出しのお尻には……ああ、欲深な肉の坑道には、鞍にあたる部分からそそり立つ張り形が、ずぶずぶと突き刺さっております。  カリクビのくびれ具合も精巧に、魔羅を模しましたその張り形は、ゼンマイ仕かけです。それゆえ頃合いを計って螺子(ねじ)を巻きますと、半永久的に陰門のなかで踊りつづける寸法なのです。  虫の羽音を思わせる音が脚の付け根にくぐもり、あるいは響き渡ります。妖しい震動が、びんびんとおなかに響きます。  ゆらり、ゆぅらりと木馬が揺藍(ようらん)しますと、象牙を加工してこしらえた魔羅が筒をぐりぐりとすり立てていきます。その拍子に尖塔が、内壁のあわいにひそむ(さね)をつつきのめすのです。 その豆粒大の突起は、いわば点滅器の役目を担(にな)っております。これこそが、淫欲の(みなもと)なのです。  ああ、張り形がまたもや反転いたしました。肉の芽を爪弾(つまび)かれますと、はち切れんばかりに張りつめました茎が、だらだらと涎を垂らします。 「ん、ぅ、んん、んんー……っ!」  しっ、と鋭い叱責が飛び、旦那さまが人差し指を唇の前でお立てになりました。

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