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第5話

 そして悪戯っ子のように片目をつぶってみせるのです。 「兄さまに、とっておきの土産を渡しそびれていたよ。巴里(パリ)(のみ)の市で見つけた特製のブローチを。こいつの使い道は、推して知るべしってやつさ」    ふむ、と旦那さまは口髭をしごきます。土産、と称する品をつまみあげますと、残照に(かざ)して、ためつすがめつなさいます。 「『推して知るべし』か、なるほどな。寝所で重宝するだろう、洒落たものを買い求めてきたな」  と、口許をほころばせますと、卓子越しに朋貴さまに笑顔を向けられました。おもむろに腰を上げますと、()を進めます。  足音が近づいてまいります。さらさらと衣ずれが歌い、衣服に焚きしめられた伽羅(きゃら)()に鼻孔をくすぐられますと、胸が高鳴ります。  つれなくされて切ない思いを味わったすえに、旦那さまにかまっていただける時がようやく訪れたのです。  独りでに笑みがこぼれて、はしたないことにむらむらして、眩暈に襲われるほどです。けれど……欲情に惚けきった、みっともない表情(かお)を見せているのではないでしょうか。  逐情を迎えられないながらも何度となく気をやったために、筒先はもとより、細紐までもびちゃびちゃに濡らす始末。  ()れ者め、と不興を買うのではないでしょうか。  心が千々に乱れ、伏し目がちになって(おとな)いを待ちます。  旦那さまは木馬のぐるりをひと回りなさったあとで、尻尾の側で足を止められました。長靴(ちょうか)のかかとに取りつけられました拍車が、鈍い光を放ちます。  蜜にまみれてどろどろになっております秘処を肩ごしに覗き込んでいらっしゃいますと、手挟(たばさ)んでこられた乗馬用の短い鞭を掌に打ちつけます。  恐るおそる振り仰いだ旦那さまは、眉間に険しい皺を刻み、不快なご様子。  どくん、と心臓が跳ねます。がつがつと張り形を食らうという痴態を演じました罰に、黒光りがするあの鞭で打ち据えられる──。  そのような血なまぐさい場面が脳裡をよぎりますと、総身が粟立ちます。  鞭が一閃すればきっと、みみず腫れが尻たぶなどをのたくり、緋色の紋様がまだらに浮かび上がることでしょう。  それは幻聴なのですが、鞭がしなって(くう)を切り裂く音が耳許をかすめますと、血の気が引いていくのです。  それでいて。鞭打たれる痛みを欲して、背中がぞわぞわいたします。さらには旦那さまが鞭を振るいやすいように、木馬の胴体を膝で挟みつけて自ら腰を浮かせてしまうのです。  そうすることで最奥に空隙が生じますと、図らずも張り形に入り口のきわをこね回されることになります。  細紐にがんじがらめにされておりますゆえに、穂先は熟柿を思わせてじくじくと汁気をふくんでいます。  その、さもしいにも程があるさまを、旦那さまが乳首に息がかかるほどの近さからご覧になっておられる。  ひくり、と茎が震え、蜜が、ねっとりと糸を引いて鞍を汚します。

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