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第11話

 ともあれできうるかぎり蕾をゆるめて、朋貴さまの意に沿いますように努めます。手ぐすね引いて待っていらっしゃったのでしょう、張り形と花びらが織りなす隙間をこじ開けて、ずぶずぶと指が埋没してまいります。  画家の卵であらせられます朋貴さまは、芸術の都・巴里に於きまして審美眼を養いますかたわら、性の奥義を学んでいらっしゃったのでしょうか?   遊蕩に精通した指が隘路でひしめき、じりじりと遡り、睾丸の真裏あたりを行きつ戻りつしながら蠢いて、そして……。 「……ひぃ……っ!」  的確に秘めやかな突起を捉えます。  腰が跳ね、前後左右に、くねります。嬌声はほとばしる端からことごとく口づけにさらわれて、胸苦しさが逆に背徳感をともなう〝快〟を芽吹かせるのです。  すいすいと口中を泳ぎ回る旦那さまの舌に、むしゃぶりつきます。そうすることで淫楽の高波をやり過ごしております間も、細紐に縛められた茎は、ぴゅるぴゅると泣き濡れて(かしま)しいことです。  その、ぬめやかな流れが花芯を潤して、襞をくじりたてる朋貴さまに加勢をいたします。 張り形に指が加われば、子どもの腕ほどの太さにもなります。そのようなすさまじいものを嬉々としてがっつきますとは、己の貪婪さが空恐ろしくなるのです。 「ん、んん……ぅ、んー……っ!」  乳首も、うっちゃられることはありません。  旦那さまが襯衣の上から指の腹でくりくりしてくださるものですから、いきおい留め具が食い入ってまいります。  旦那さまは随時、愛の鞭を振るってくださいます。痛痒さと快さがない交ぜになったものに身悶えして、木馬をぎしぎし言わせますと、きつく舌を咬んでお灸を据えてくださるのです。  とは申しますものの、度を超えた快感は時として毒なのです。  乳嘴を爪繰るのと並行して、気まぐれに穂先をひと撫で、ふた撫でされますたびに、欲望の目盛りが振り切れる段階にきております。  (さき)に申しあげましたとおり、下肢は木馬の胴体に結わえつけられております。  にもかかわらず木馬の横腹に狂おしく膝を打ちつけながら、前にのめり、反り身になってしまうのです。  得手勝手に肉欲に耽ってしまいますようでは、お側仕えと名乗るもおこがましゅうございます。  細紐を解いていただき、放埒を迎えますのは、旦那さまが存分に愉しまれたあとで。  自分をそう鼓舞するのですが、精巣に溜まりにたまった淫液をまき散らして楽になりたい──頭の中は、それ一色です。  切ない、苦しい、切ない、苦しい……厚かましくも旦那さまに頬をすり寄せて、くちづけをせがみます。眼前で閃いては遠ざかる舌を欲して、はぁはぁと犬のように喘いでしまうのです。 「……ひぃっ、ぁ、ん……ひぃっ……!」  指が、増やされました。張り形が右回りに内壁をすりあげていけば、朋貴さまのしなやかで軽やかに動く指は左回りに(さね)を引っかいてゆかれます。

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