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第15話

 もっとも士道不覚悟の気風は薄れて久しく、当節は職業婦人なる者が銀座の街を闊歩いたしております。  第一、殊更にしゃっちょこばらずとも三日にあげずを吹くという恩恵に浴しております以上、正解を導きだすのは決して難しいことではありません。  では謹んで、ひと舐めさせていただきます。  ぺろり。  ぺろり。  …………あっ、こちらです。向かって右側に鎮座まします竿先が、旦那さまの武器に相違ありません。  自信があります。なぜなら旦那さまのお味がいたします。ちょっぴりしょっぱくって、コクがあって。世界最高峰と称えられます葡萄酒などより、ずっとずっと芳醇で味わい深いのです。たとえ本物の(めしい)であっても、間違えっこありません。 「しずは、しかと吟味したか。では、わたしのイチモツだと判じたほうを銜え直してみるがよい」  幸甚に存じます。おつむりに降りそそぐ声が怒気をふくんでいるように感じられて少々、違和感を覚えましたものの、お言葉に甘えて早速ぱくりと……。 「むぐぅ……っ!」  喜び勇んでお迎えにあがったとたん、猛々しいものが容赦なく喉を衝いてまいりました。 ここでえずきますようでは、お側仕えの名折れです。ですけれど尖塔が喉ちんこにぶつかりますと、胃袋がでんぐり返るようです。  情けないことです。むせ返ったばかりか、殿方の太刀を吐き出してしまったのです。  粗相をしでかしました以上、折檻されますのが世の習い。すくみ上がりましたせつな、アスコットタイが剝ぎ取られました。  最初に目に飛び込んでまいりましたものは、純白のさらしを、いわゆる(ふんどし)に仕立てましたものと、股ぐらを袋状に覆う布の脇から取り出されました陽根。  ただし寸法・目方ともに、旦那さまのお宝とはいささか(おもむき)の異なる……。  おそるおそる視線を上にずらしていきました先に、尻端折りに裾が帯にたくし込まれた紬を見いだします。  狐につままれたようです。目をしばたたいみても、仰ぎ見る光景に変わりはありません。  どうして間違えてしまったのでしょうか。  折しも口中にぐいぐいと攻め込んでこられる男根は、朋貴さまのそれです。  さすが、ご兄弟。面立ちが似ていらっしゃるのはもちろんのこと、舌ざわりといい勃ち上がったときの反り返り具合といい、夜のお道具も瓜二つといってもよいほどです。  カリクビはどっしりとえらが張っていて、長くて太くて頬張り甲斐がございます。  もっとも(つわもの)と申しましょうか、魔羅光りがしております旦那さまの肉竿に較べますと、朋貴さまの幹はいくぶん細みで、なおかつ寸足らずです。  今ひとつ迫力に欠けますぶん、それはそれで、ねぶってさしあげやすいという利点がございますけれど。  などと、暢気に舌をつかっている場合ではありません。重大な局面で誤謬(ごびゅう)を犯しましことに気づいて、今更ながら蒼ざめます。

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