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第16話

 どれほどお詫びいたしましても、お詫びのしようがございません。お側仕えがご期待に背きましたばかりに、面目丸つぶれといった感があります旦那さまは、といえば……。 「っ、……ひぅっ、あっ、ひぃ……っ!」  壜が……嗚呼、壜が肉の輪をかき分けて突き進んでまいります。  丸みを帯びた壜の底まで、この業突く張りの淫筒にすっぽりと収まりました証しに、指の背が蟻の門渡りにぶち当たります。  かと思えば、壜がひと息に引き出されます。  進軍、退却、進軍、退却……相反する律動が豪快に刻まれますたびごとに、襞がずるりずるりと壜に巻きつき、花びらがあられもなくめくれるのです。  茎が……ああ、ひところ泣きやんでおりました茎がほろほろと涙をこぼして、ぴちゃぴちゃと穂先がおなかを叩きます。  を伝って蜜が垂れれば垂れますほど、逐情を封じます細紐は固く(しま)っていくのです。  茎はくびれ、椿の花がぽとりと落ちるさまにも似て、腐れてもげてしまいそうです。 「丁半博打に棚ぼた式に勝ったと言うところかな? 兄さま、この子の口を好きに使ってもかまわないんだね」 「くどい。兄は約束を違えはせぬ」  憮然としたそれを聞いて、朋貴さまはにんまりなさいます。這いつくばっておりますこちらの眼前で仁王立ちに足を踏ん張りますと、襟髪を鷲摑みに、ぼんくらな頭を引きずりあげにかかります。  そして口中にお招きしますのももどかしげに、ご自身に手を添えて、唇の結び目をこじ開けておしまいになるのです。  刀身はたぎり立ち、ぐぐっとエラが張り出してまいります。朋貴さまは、こちらが舌をからませきらないうちから、荒々しく腰を前後させます。  あっ、あっ、朋貴さまは存外に荒くれ者でいらっしゃいます。顔を股ぐらに固定されておりますところに、喉を突き破らんばかりにむちゃくちゃに腰を揺すられては、息継ぎすらままなりません。  うっかり歯を立ててしまうことがありませんように、口を開いておくだけで精一杯です。  ともあれ、そうせよ、と旦那さまより申しつかりました以上、朋貴さまを法悦境にご案内いたしますのが、お側仕えの心意気にございます。  頬の内側の柔壁を朋貴さまの形にへこませておいて、鈴口をついばんでさしあげるといった、旦那さま直伝の淫技を披露しとう存じます。  では、朋貴さまが腰を引き気味になされたところで早速、筒先をぢゅぶぢゅぶと……。 「あぐ、ぁ、あっ、ぅぐ……ん、ん……」 「むぅ……口の中の粘膜を波打たせながら舌の先でカリをノックするとは、小癪にも高等な技を使うじゃないか。兄さまが、さぞかし丁寧に仕込んだんだろうな」 「最初のうちは(いただき)を食むにも目を白黒させていたが。しずはは天性の床上手だ。めきめきと上達して、現在(いま)では進んで精を飲み干す」  盆栽の出来・不出来を論じますような会話が、頭上で交わされます。  旦那さまが、(ねや)における習熟ぶりを褒めてくださった。そう思うと、誇らしさで胸がいっぱいになります。

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