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第23話

  と、(おとがい)を掬われました。(こうべ)をめぐらせました先に、むっつりとしてにこりともなさらない旦那さまを見いだします。  ()めすえられまして、すくみ上がりましたところに、指が伸びてまいります。次いで唇の結び目がこじ開けられます。  お医者さまがヘラ様の器具で舌を押さえて患者の喉を診ますように、旦那さまは中指で口の中をかき回します。そして、いちだんと眉根を寄せますと、邪魔よがしに顎をしゃくるのです。  意を汲みまして、朋貴さまは不承不承といった(てい)で離れていかれます。拗ねたふうに、どかりと長椅子に躰を投げ出されます。下帯の脇から萎え衰えぬイチモツがはみ出しておられるさまが、いささか滑稽であります。  それにしても、お若いぶん回復力もすごぅございますね。やけ酒よろしく葡萄酒を呷りながら雄蕊と花芯が睦み合うところを、ちらちらと横目でご覧になっておりますうちに、むらむらしてこられたのでしょう。  如意棒が、むくむくと鎌首をもたげていきます。反り返って獰猛な様相を呈されます。  職業意識のようなものに、にわかに駆られます。手持ち無沙汰になさっておられます〝朋貴さま〟を今いちど口許に突きつけられましたら、およばずながらお慰めするにやぶさかではありません。  ふと、朋貴さまと目が合いました。朋貴さまは照れ笑いを浮かべますと、咳払いひとつ、紬の前をかき合わせます。尊大ぶったふうに、腕組みをなさいます。 「尺八の技に努めて大儀であったな。後学のために訊いておくが、兄さまも斯くやというほどの天晴れな射精()しっぷりだっただろう」 「んん、んん(美味しゅうございますけれど、旦那さまには遠く及びません)……」 「しずは、お追従を言って朋貴をつけあがらせるものではない。だいたい、わたしの許しを得ずに子種を嚥下(えんげ)してやるなど越権行為もはなはだしい。禁を犯した罰に〝こいつ〟をひと晩中……」  穂先が、握り込まれます。ずずず、とがねじ込まれます。 「がんじがらめに封じておいてやろうか」     殺生です。茎が本当に膿みただれて、ぽたりと取れてしまう前に後生ですから堪忍してください。  しょぼくれた表情(かお)に、憐憫の情をもよおされたのでしょうか。旦那さまが口許をゆるめ、莞爾(かんじ)と微笑みます。逆〝へ〟の字を描く形にこちらの下肢を持ち上げておしまいになりますと、棍棒を軸に敏捷に体(たい)を入れ替えにかかるのです。 「ぁ、ひぃっ、ひ、あ、あっ、あ……っ!」  男子たるもの我慢強くあらねばならない。そう、おっしゃって旦那さまは殊更な嬌声を好まれません。奥ゆかしさに欠けますことは承知しておりますが、甲高い声を放ってしまいます。 なぜなら。  きちきち、ずぽずぽと旦那さまにつながれましたまま反転の栄を賜りますと、楔をえぐり込まれます角度が刻々と変わります。襞がねじれて、最奥に甘美なさざ波が走ります。 「ふぅぅん……ぁ、ああ……っ!」  体位変改の儀が、無事に終了いたしました。胸と胸が密着して、首っ玉にしがみつくふうに抱き直していただきますと、今度は魔羅裏の起伏は、主におなか側の内壁をすりあげてくださいます恰好になります。 「ん、ん……っ、ふぅ……っく……!」  先端の丸みが、ぐぬぐぬと〝ぽっち〟をすりつぶして……ああ、心地ようございます。うっすらと口を開きます。  (みだ)りがわしい吐息を逃がしましたところに、唇が重なってまいりました。  うろたえて唇をもぎ離しますと、 「なぜ拒む。朋貴の乳汁には舌鼓を打っても、わたしの唇はいやだと申すのか」  眼光烔々として人を射る眼差しが向けられます。心なしか、茎がうなだれます。

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