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第24話
いいえ、いいえ。決して旦那さまを疎んじたのではありません。ただ、こう思えば接吻に応じるにためらわれたのです。
弟君の精とはいえ、他の殿方が放ったものの残り香が色濃く漂う舌を吸うなど、厭わしく思われるのではないのでしょうか?
「しずは、どうなのだ」
無学な者の哀しさです。肝心なときに限って舌がもつれ、機知に富んだ受け答えができません。
ですから真一文字に結ばれました唇におずおずと唇を寄せていき、忠義を尽くすのです。
途端に嚙み裂くような、くちづけの嵐にさらわれます。それを根こそぎにしますような烈しさで、朋貴さまの味をまとった舌を吸いたてていただきますと、慕わしさで胸がいっぱいになります。
襞が、きゅうきゅうと陽根にしなだれます。
その間も、倦 まずたゆまず、ゆるやかに律動が刻まれます。ずちゅり、ぐじゅりと淫靡な水音が谷間にくぐもるなかで、旦那さまが鹿爪らしげに木馬を見やります。
「今宵の趣向は、乗馬の練習というには酷であったか。正直なところを言ってごらん」
狂おしさをはらんだ吐息が、唇のあわいをたゆたいます。寵 に甘えて増長するようでは、お側仕え失格です。
けれど快感に翻弄されるあまりに、頭のネジが何本かまとめて吹っ飛んだ状態にあるのかもしれません。
頬に頬をすり寄せて、切々と訴えます。
「及第点をいただけるまで稽古をつけていただきとう存じます。我がままを承知で申しあげますと、旦那さまとふたりっきりで……」
紡ぎ終えないうちに、肋骨がへし折れますほどの力で抱きしめられました。振り仰ぐ目尻に、優しい皺が刻まれます。
髪の毛がひとふさ梳きとられて、そこに唇が舞い落ちますと、双眸と茎がともにうれし涙を流して泣きやみません。
「仲よきことは美しき哉。妬けるねえ」
指笛で冷やかされますと、今更めいて頬が紅潮いたします。すると朋貴さまの視線を遮るように、旦那さまがひしと抱き寄せてくださいます。
ところが、せっかくのお心づかいが裏目に出てしまうことがあるのですね。おなかに挟まれて茎がひしゃげ、にぶい痛みが走ります。
その茎は、絶頂を迎えるまぎわに繰り返しはぐらかされたがゆえに、血行が悪くなっているのでしょう。紫がかって、おぞましいような色合いです。
「よく音を上げなかったな。ほどいてやろう」
接吻を交えてねぎらってくだされば、報われてあまりあります。こよりは蜜をたっぷり吸って、ふやけております。
そちらがまず抜き取られまして、放り捨てられますと、べちゃりと絨毯に張りつくありさまです。
ひと呼吸おきまして、細紐に手が伸びます。おでこをついばんでくださるのと並行して、ひと撫で、ふた撫で穂先をくりくりされますと隘路が旦那さまの形に狭まって……、
「あっ、ぁ、ああ……っ!」
いななき、あられもなく腰を打ち振ってしまうのです。
一事が万事、常軌を逸した淫奔ぶりをさらす始末です。そのような狂騒状態にありますものですから、細紐の惨状は推して知るべし──です。
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