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第29話
びゅく、びゅく……!
昂ぶりが白濁を噴き上げます。放物線を描いて飛んでまいりました青臭い雨が、欲情に惚けました顔に降りそそぎますと、それが火照った頬に心地ようございます。
かたや旦那さまは、朋貴さまに雷を落とされますのは後回しになさるご様子。
「さあ、好色な孔にたっぷりかけてやるぞ。身ごもるほどに射精 してやるぞ。思うさまに搾り取るがよい、覚悟いたせ」
「は……はい、うれしゅうございます……!」
腰づかいが、乗馬でいえばギャロップへと変化いたします。旦那さまが、ものすさまじい烈しさで突き進んでこられますたびに自然と躰がずり上がり、頭のてっぺんが長椅子の脚にぶつかります。
ぬちゅ、ぬちゅ、ぐぷ、ぐぷ……!
力任せに腕の中に引き戻され、桃源郷に遊んでいるような夢心地のなか、旦那さまがようやく欲望を解き放たれたのを感じます。
「あっ、ああ……旦那さ、ま……っ!」
どぷり、どぷりと大量の熱液が、深奥に襲いかかります。その激流が花筒全体にしみ渡り、細胞の隅々にまで行き渡れば、旦那さまに対する思慕の念と絆がいちだんと深まるのです。
「およそ動じることのない人間だと自惚れていたが事、おまえに関しては自制心を失う。かけがえのない宝物を見せびらかしたい、鍵がかかる抽斗 にしまっておきたい。愛慕の情と肉の欲がせめぎ合ったあげく、弟を焚きつけて、おまえを嬲りぬくザマだ」
いいえ、いいえ。旦那さまのなさることに不満など、ひとつもありません。翼でくるみますように慈しんでいただき、身にあまる光栄でございます。
朋貴さまが放たれたものが頬にこびりつき、〝ふのり〟のようなそれが乾きはじめております。旦那さまは、残滓を爪でこそいでくださいます。いたわりに満ちた仕種で髪を梳いてくださいます。
しずは、と耳朶をくすぐる囁き声は子守唄のよう。意識が、薄れていきます。
春風 のどけしある夜、かようにして肉の饗宴に酔いしれたのでございます──。
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