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Ⅲ 雨のスクリーン⑤

「キスしよ」 俺から誘った。 俺、いつから男を誘うふしだらな自分になったんだろう。 それも親友を誘うなんて…… 「友達、なくしちゃうかな?」 キスしたら。 「恋人だろ」 クスリ、と弧を描いた航雅の口許が奏でた。 そっか。 俺達、恋人同士なんだ。 愛し合わないといけないんだ…… 唇が近づく。 唇を寄せる。 航雅とキスするのは初めてじゃない。 なのに初めてみたいにドキドキする。 ………………これが、恋 俺、恋愛してる。 親友の航雅と。 うぅん、親友じゃなくて恋人だ。 航雅は俺の恋人。 口づけするのは恋人同士なら普通の事…… 俺、誰に言い訳してるんだろう。 唇と唇が触れる寸前で躊躇してしまった俺は、意気地なしだ。 「……航雅っ」 「お前を抱きたい」 えっ…… 「ここでお前を抱く」 「でも、ここ。電話ボックス」 「ガラス曇ってるから、外からは見えないよ」 「でも」 「恋人同士で愛し合うって、そういう事だから」 そういう事、するんだ。 俺と航雅…… 好き同士だから 好きだから、キスする。 愛し合う。 心も体も。 好きなんだって、 体に言い聞かせなくちゃ……… スマホの着信は、とっくに止まってる。 「ひゃっ」 くぐもった悲鳴を上げてしまった。 「変なとこ触んな」 「男同士はココで繋がるんだぞ」 「あはぅっ」 指先が後ろの繊細な場所を這って、喉がのけ反る。 チリチリする。 航雅に触れられた場所が熱い。 グリン 指が必要に割れ目を虐める。 ぐにぐに、ぐにゅぐゅ……指が蕾を。 航雅 コウガ こうが 何度も心の中で、お前の名を呼ぶ。 「航雅……………………ちがうんだ」 お前じゃなくて………ごめん 求めていた筈なのに。 体温から逃れたくて。 胸を押し退け……ようとした体ごと、マントの中に包まれた。 身動きできない。 強健な腕がぎゅっと、俺を逃すまいと捕まえている。 お前を…… 航雅、お前を傷つけた。 「お前が嫌い」 頭上から降る声が針のように胸を刺した。 「だから、キスしよう」 ………………えっ すくい取られた顎をクイっと持ち上げられて見上げた瞳は、蒼い夜空のようだった。 「嫌いだよ、俺がいるのに別の男の事考えるお前が……」 嫌い。 「お前にそんな顔をさせてしまった俺は、もっと嫌いだ」 ………チュッ

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