19 / 20
Ⅳ 雨のスクリーン ver.2
トントンっ
電話ボックスの外で、結羽がノックした。
どうしたのだろう?
外で結羽が指差して、何かを必死にアピールしている。
いぶかしげに視線を移したそこに……
『すき』
曇りガラスに浮かぶ、ひらがな二文字
たくっ、いつ書いたんだ。
手を振って走り去っていく結羽の影が見えた。きっと笑顔なんだろう。
あいつの事だから。
分かってる。
俺が自分を嫌いだと言ったから『すき』だと、返したんだ。
そんな事してると、悪い狼に食べられるぞ。
曇りガラスの向こうに結羽はいない。
冷たいガラス
『すき』の下に指を置いた。
『だった』は書かない。
恋は終わっていないから……
ともだちにシェアしよう!