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知られざる真実2
「兄さん、俺だよ。入っていい?」
「…疲れてるから」
「母さんに頼まれて林檎持って来たんだ。渡すだけだから開けて」
暫く待つと扉が開いた。翔也はその隙に部屋の中へ入り込む。
「林檎渡すだけって言っただろ」
ドアの前で皿だけ受け取るつもりだった涼は明らかに不機嫌な声音で、自分の横を擦り抜けて部屋の中に入った翔也を見つめる。
「兄さん、大丈夫なの?」
「何が」
「目、赤い。泣いた後みたいに」
「取材で徹夜だったんだから目も赤くなる」
「熱とか大丈夫?寒い?」
「別に、何で?」
「そんな長袖着込んでるから。熱があるなら尚更、首元は開けた方がいいと思うよ」
数日後には5月というゴールデンウィークの始まり、外気温はもう温いより暑いと言う表現の方が合うような日に、涼は長袖パジャマを着ていた。
「…これは…たまたま手にしたやつが長袖だったから。そうだな、後で着替え直すよ」
「今、着替えたら?暑そう」
「なんだ、お前俺の裸が見たいのか?」
「ち、違う!何言って…だ、誰が男の裸なんか…」
涼への恋心を知られるわけはないと思うのに、翔也は動揺し無駄に口数が多くなる。
「バカ、冗談だろ。何マジに答えてるんだ」
涼は微かに笑顔を見せた。
少し雰囲気が和らいだのを感じて、翔也は言いたかった事を口にする。
「…兄さん、仕事がキツイんじゃないの?徹夜で取材で体調崩して御飯食べられなくなるとか、そんな会社は辞めた方が」
「仕事は何でも大変なもんだよ。今の会社はとても良いところでやりがいがある」
「でも、凄く疲れてるみたいで、特にここ最近。そんなだったら父さんの会社の方に移ったら?どうせ将来は継ぐかもしれないんだし」
「あはは!」
突然涼が大笑いしたので翔也はびっくりする。
「兄さん…?」
「あはは…あーあ可笑しい…」
涼はしばらく可笑しそうに笑ってから、ふいに真面目な顔になって言い切る。
「義父 さんの会社はお前が継ぐんだよ。子どもはお前だけなんだから」
「そんな区別、父さんはしてないだろ。実際、いつでも自分の会社に来たらいいって言ってるし」
「俺の事は子どもなんて思ってないよ」
「なんでそんな風に考えんの?父さんが俺だけ特別扱いした事なんてないじゃん」
戸惑いを隠せない翔也に、涼は今まで見せた事がない冷たい表情を向けた。
「翔也、本当に疲れたからもう出てくれ。林檎ありがとうって、母さんに言っておいて」
拒絶の空気を感じ、翔也は仕方なく部屋を出た。
この時、翔也は知る由もなかった。
涼が取材と言い、父が出張と言っていた前日、他の男に抱かれた仕置きだと、涼が一晩中酷く凌辱され続けていた事を。
翔也が部屋を出ると、涼は翔也が扉をノックした時に仕方なく着た長袖パジャマを脱ぎ捨てた。
縛られた痕がある手首や、自分で見えるところだけでも至る所にある、キスマークと言う名の鬱血痕を見る。
針で責められた乳首は腫れ、背中も鞭打たれたところがみみず腫れとなっており、どう横になっても痛い。
「自分の子どもと思ってたらこんな事しないだろ…」
涼は小さく呟いた。
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