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重なる想い2

秋になった。高2の翔也はそろそろ大学進学の方向性を決めなくてはならない。 本来親に相談するべきだが、母の由美は相談相手にはならない。由美は翔也が10歳の時に母となった義母だが、天然そのもの。本人も大学に行っていないが、そもそも受験の相談は無理だろうと翔也にも分かっていた。 父も忙しく、高校受験の時の書類は当時大学生だった義兄の涼に書いてもらった。 由美の実の息子である涼は国立大学を出て大手出版社に勤めている。 その点について、父の武範に聞いた事があった。 『兄さんは賢いよな、母さんは天然なのに』と。父は翔也が聞きたいことをすぐに理解した。 『涼の実の父親は難関大学の医学部の学生だったらしい。由美とは結婚しなかったけど。涼がとても優秀なのは、その父親に似たんじゃないか』 合点がいった。 親の良いところばかり受け継いで生まれてくる子というのは確かにいるのだ。 涼は頭の良さや機敏さを父親から、容姿の美しさや優しい性格は由美に似たのだろう。 翔也は大学受験について相談しようと涼の部屋へ向かった。 「兄さん、受験で相談があるんだけど」 「うん、いいよ」 涼の部屋の中に入り、ローテーブルの前に座る。 テーブルにはノートパソコンが開いていた。 「ごめん、仕事中だった?」 「いや、今日は10月31日だから…ハロウィンパーティついでに撮った大学時代の映画観てた」 「ああ!あの兄さんが女装してる映画!えっ⁉︎DVDあったんだ」 「女装強調するなよ。まあそうなんだけど…。DVDは焼いてもらって持ってた」 「俺も観たい!」 「あー悪い、これは駄目なんだ」 「何で?女装の事ならもう一回は学祭で観てるから。今更恥ずかしがらなくても同じだろ」 「ほんと駄目なんだよ。これは1年に一回、今日だけ観る事にしてて、それ以外は大事にしまってある。大事なただ…いや、大学時代の思い出だから」 「観るのも駄目なの?」 「ごめんな」 「観たからってDVDなんだから減るわけでもないのに?」 「ごめん」 「…うん…」 翔也はDVDについては引き下がり、大学受験の相談に切り替えた。 「ありがとう」 一通り進学相談を終え、翔也は涼に礼を言って部屋を出る。 あのDVDどうして観るのも駄目なんだろう。そういえば、吸血鬼役の友達をいつか自分に紹介したいとまで言ってたのに、あれから2年も経つけど家に連れて来たりもしていない。喧嘩でもしたのか?でも、喧嘩したならDVDをあんなに大事にしないよな…だって喧嘩相手が映ってるものなんて、気分良くないはず。 翔也は腑に落ちないものを感じながら、今出て来た涼の部屋の扉を見つめた。

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