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抑えきれぬ劣情4
翔也にとって涼を組み敷いてセックスすることは、何度も何度も思い描いたことだ。
自慰をする時は必ず涼を犯した。
何年も抑えてきた想いを爆発させたのは、努力に結果が比例しない受験の苛立ちだったかもしれない。
しかしこうして組み敷いて口づけると、ただ涼への想いが溢れ出す。
好きだ。
頬を撫で、耳朶を甘噛みする。脳内で何度もそうしてきたように、涼の下半身へ手を伸ばす。
「翔也!やめてくれ」
涼が何とか翔也の下から逃れようと身を捩る。
翔也は現実に戸惑う。
脳内ビジョンと違って実際の涼は逃げようとする。翔也は常に全身で押さえつけなければならない。自分の左手も涼の右手を押さえているので、右手だけしか自由に出来ない。
「兄さん、諦めて。俺もう無理だから」
「…無理って何が?」
「ずっとずっと好きだった。その気持ちをもう抑えられない」
「…好き?ずっと?」
「ずっとだよ、3年前からずっと」
「好きだからって、いきなりこんな風に無理矢理なことするのか?」
「それは…」
「こんな乱暴なことして俺がどう思うか考えろよ」
「…」
翔也は涼の言葉に口ごもる。
「翔也、逃げないから一度離れて。苦しい」
翔也は暫く涼を見下ろして、それから馬乗りになっていた涼の身体の上から離れた。
涼は起き上がって翔也と同じ目線で向き合う。
翔也は涼に見つめられ、急激に恥ずかしさが沸き起こるが、一方でもう、自分の中でこの気持ちを隠し通すことは限界に来ていたのだと自覚する。
「新しいシャツ着ていいか?」
涼は裂かれたシャツを脱いで翔也に承諾を求める。
翔也は再び涼の腕を掴んだ。
「逃げないって、言っただろ」
涼は掴まれた腕をそのままにし、穏やかに話す。
「翔也は、俺をどうしたいの?痛い目に合わせたい?」
翔也は驚いたように目を見張る。
「痛い目なんて、俺はただ兄さんが好きだから」
「うん、でも準備もなしに抱きたいって、痛い目に合わせるのと同じだよ。男同士でどうするのか、調べたりした?」
「…うん」
「だったらわかるだろ。女じゃないから、濡らす物とか無いと無理なんだよ。好きだからって何してもいいわけない」
『お前が好きだ、愛してるよ』
そう言って自分を縛り鞭で打ち付ける翔也の父親が浮かぶ。
『お前を離さない、誰にも渡さない』
涼に近づく奴に危害を加えてでも排除する。そんな人間に、翔也にはなって欲しくない。
「翔也、シャツ着ていい?手、離して」
涼はもう一度、翔也に言った。
翔也は涼を見つめて、掴んでいた手を離す。
「ありがとう」
涼は翔也に礼を言い、クローゼットからTシャツを出して着た。
シャツを着た涼はベットサイドに座った。自分の横を手で軽くポンポンとして、翔也に言う。
「翔也、横においで」
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