26 / 39
崩壊の序章
翔也は希望していた大学、義兄 の涼が卒業した大学に受かった。
自分でも凄く頑張ったと思うが、その原動力となったのは間違いなく涼の存在だ。
受験のプレッシャーも重なり、想いを抑えきれず告白してから身体の関係を許してもらっている。
恋愛感情はないと言われている。他に好きな男がいるとも言われている。でも同性という努力で解決出来ないことは障壁では無いとはっきりした。だったらあとは自分が頑張るのみ。
大学はそれなりに充実していた。授業もさすがにレベルが高く、周囲は個性的な学生が多く面白い。
同世代の人間が集まっていて、当然恋愛話しにもなる。翔也自身女の子から誘われることも結構あるが、正直興味が湧かなかった。
アルバイトを一緒にやらないか、と言われることもある。でも必要性がなくいつも断る。翔也はホテルをいくつも経営する父から充分な小遣いを貰っており、その点は恵まれている環境に感謝するしかない。
アルバイトはお金だけでなく社会勉強にもなると思うが、今は時間を潰したくなかった。
涼と過ごす時間を確保したい。
涼は社会人であり、仕事そのもので遅くなることも、仕事に関連した飲み会などで遅くなることもある。
でも時間が許す時は、翔也の誘いに応じてくれる。
無理と拒否されることも勿論あるが、仕事で疲れている涼にそういう日があるのは当然のこと。
ほんとうはセックスだけでなく、もっと一緒に出かけたりデートのようなことをしたい。実際誘ったことも何度もあるが、映画を見ようと言っても、外食しようと言っても、『友達と行っといで』と言われる。要するに断られていることは自覚している。
身体を繋げても、涼にとってまだ弟の域を出ないのだろう。
自分がもっとしっかり大人にならないと。
翔也は何度も自分に言い聞かせる。
ともだちにシェアしよう!