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崩壊の序章2
大学に入れば変わるかもしれない。
涼は翔也が自分に向ける想いをそういう風に考えていた、というより願っていた。
受験のプレッシャーで押しつぶされそうだった翔也の気持ちを受け止めて、セックスの相手になった。
武範の玩具でしかない自分の身体などに勿体をつけるつもりもないし、翔也の気持ちがそれで落ち着けばいいと考えていた。
大学に入り、新しい環境で新しい出会いがあれば自分のことなど忘れるだろうと。
涼自身大学で糺と出会い、武範の元から去り自分の人生を生きようと一度は前向きに考えたのだ。
結局、武範から逃げることは叶わなかったけれど。
翔也は大学2年になった。
二十歳の誕生日を迎えても涼への想いは変わらないらしく、ベッドに誘われる。時々、まるで彼女をデートに誘うように映画や食事にも誘われる。
翔也は可愛い。武範の呼び出しと重なり仕事で疲れてるからと誘いを断る時の、翔也の悲しげな顔が切なくて、それ以上に泣かせたくなくて関係をずるずると続けていた。
危惧しながらも翔也の気が変わることに期待を寄せ過ぎていた。
翔也との関係が3年めとなり、涼は自分の考えの甘さを痛感する。
「今日、無理かな?」
翔也に誘われる。義父の武範からは2週間後の予定を空けておくように言われており、今日なら大丈夫だ。
翔也に、そろそろ終わりにしようと話さなければ。
翔也と武範は実の親子。これ以上、二人と同時に関係を続けていくのも限界だ。
糺が好きな仕事をしながら無事に暮らせるように、自分は武範から逃げることは叶わない。
そして翔也を恋愛対象としてみているわけでもない。
涼は、翔也にもうこの関係をやめようと告げ、誰か別の人に目を向けてもらうように諭さなければと決心する。
涼は翔也に返事をする。
「いいよ。俺もね、ちょっと話しがあるし」
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