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崩壊の序章4
翌週、翔也は毎日家に帰ると母の由美から様々な服やアクセサリーを見させられた。
「これオープニングパーティーに着ようと思ってるけど、どう?」
「いいんじゃないかな」
「でも色が派手過ぎない?」
「お母さんはなんでも似合うよ」
「ちょっと翔也、めんどくさがらないで真剣に見て」
「真剣に言ってるって」
「涼にも意見を聞きたいのに、あの子仕事仕事ってちっとも早く帰らないんだから」
兄の涼は由美の一人ファッションショーから上手く逃げているのだろうと翔也は思う。ただ、母さんはなんでも似合うと言ったのはお世辞ではない。涼の整った顔立ちは母の由美譲り。
天然だが、そこがまた可愛く綺麗で優しい母。涼といい、母の由美といい、この親子と家族になれて良かった。
あらためて父の武範が再婚に踏み切ってくれて良かったと思う。
武範が経営するホテルが台湾に新規オープンする。そのオープニングイベントに夫婦揃って行くことは前から決まっていた。
ちょうど結婚10周年ということもあり、夫婦二人で豪華客船に乗って暫くゆったり船旅を楽しんでから、台湾へ行こうかという提案が武範から出た。海外進出という大きな仕事が順調に進み、少し休みを取るつもりだと。
由美はもちろん大喜びで、翔也も涼も大賛成だった。
そして出発を来週に迎え、由美がウキウキと旅行の用意をしているのだ。
由美が言う。
「お父さんはギリギリまで仕事なの。来週の月曜日出発なのに、その前の金曜日から出張で日曜日まで。出発前の日くらい休んだらいいのにねえ」
「金曜日から日曜日まで?」
「うん、そう」
「へえ…。兄さんもそう言ってたよ。来週の金曜日から日曜日まで取材旅行だって」
「涼も?みんな忙しいんだねー」
また一緒だ。
翔也は以前から奇妙に思っていた。二人はやたらと出掛ける日が重なる。
全然違う仕事なのに、一緒にいるところも見た事があった。涼はビジネスマンの取材だと言っていたが、その後涼の担当する雑誌にそんな特集載っただろうか。
二人の関係は義理の親子というよそよそしさとは別に、妙な違和感があるのをずっとぬぐえないでいる。
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