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幼馴染の夢物語@2
でも、そんな10年以上前の夢物語が原因で、幼馴染の仮装を見られてないオレは可哀想だと思う!!
声高に宣言してみても、どーせ咲もクラスメイトくんも「頭悪いヤツを見る目」で見てくるんだろうから言わないけどさー。
とんがり帽子の魔女とか、羽根としっぽが可愛くてセクシーな小悪魔とか。
そーいうの、見られるチャンスは沢山あったのに、咲は上手い具合に逃げてきたんだ。今だってそう。クラスメイトくんを味方につけて、今年の仮装もかわそうとしてる。
……咲、本気で信じてるのかな? ありえない、とは思う。咲は基本冷めてて、「本当にあった!」って言われてる怖い話も、「作り物だろ」って鼻で笑う。
そんな咲が、高2にもなっていまだ、10年以上前の約束を律儀に守ってるんだから。「どういうつもりっすか?」って聞きたくなるよね。夢か現実かだって、あやふやになりそうな話なのに、さぁ。
「つーか、もし、もしだよ? その話がホントだったとして、咲はなりたいんすか? 吸血鬼の花嫁」
「お前、ほんっっっと、この話になるとしつこいな!?」
「答えてくれなきゃ、ずーっと言ってるっす!」
「答えたら言わないな?」
「…………」
「答えたら言わない、な?」
「……はいっす」
負けた。気分は正座でお説教されてる子供っす。
でも、その話が「おにーちゃん」の嘘であれ、咲の夢であれ、気にならないって言ったら嘘っすよ。なんたって今は高2の10月半ば。
そろそろ咲にとって、17のハロウィンなんすから! 場合によっては意地でも仮装させないとっすね! 背後からこっそり猫耳カチューシャとか、手段は選ばないっす!
咲はオレの企みとか全然知らないのか、オレが嘘をついてると思わないのか。
……ちょっと疑うように、じーっと見られたけど、結局ため息1つしてから、
「吸血鬼の花嫁がどうこうとか、おにーちゃんの正体とか、結構どうでも良くてだな。今のオレは、もう1度おにーちゃんに会えれば良いって思ってんだよ。仮装しねぇのは約束もあるけどジンクス。吸血鬼の花嫁は2の次、3の次」
「……でも、“おにーちゃん”にプロポーズされたら?」
「おっ、お前まで、おにーちゃんって呼ばなくて良いだろ!? 凍月 さんって……いや、ダメだな、凍薔薇 さんって呼べ!」
上ずった声に赤い顔。しかも質問にはきちんと答えてないって、コレ、ビンゴっすよねぇ。
凍薔薇 凍月。
いかにも偽名っぽいこの男こそ、咲の“おにーちゃん”で、10年以上咲の心を捕らえて離さない、憎っくき恋敵っす! いや、恋敵なのかどうかはあやふやだったけど、この反応で決定っすよね。
なんとしてでも今年こそ、無理矢理にでも、咲に仮装させるっす!!
「じゃ、雅は仮装ナシな。気が向いたら参加してくれ」
「ああ、助かる」
「参加は! するっすよね!? サーク?」
「お前の手荷物検査を徹底してくれるなら前向きに検討する」
「おう! コイツの服全部はぎ取ってでも協力するぜ!!」
まるでオレの企みがバレてるみたいに話が進んでく。まあ、咲は顔が良いから、仮装ナシでもパーティーに居るだけで花はあるっすよねぇ。
だからその気持ちは分かるんすけど、なんとしてでも咲の仮装姿を見ないと!
「ねーねー、咲。仮装しよう? どーせそんなオハナシ、夢物語っすよ!!」
「……なあ、コイツが言わないって言ったの、どれくらい前だった?」
「今1分経ったトコ」
「いい加減にしろよ、達希ィ!!!」
……投げつけられた辞書が足元に落ちた時は、さすがにヒヤッとした、とだけ、言っておくっすね。
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