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第5話
「こちらもお似合いですよ」
「そうですか?ねぇ、どっちがいい?」
ハロウィンの日が誕生日という彼女の為に指輪を買いに来たカップルを接客しながら、今日がハロウィン当日だと言うことに気付いた。
結局、あれから秀志から連絡はない。
いつもならハロウィンは2人で過ごしてたなぁと思って、今年は微妙な気まずさから会うこともないだろうなと小さくため息を吐いた。
「お兄さんなら恋人に贈るとしたらどちらにしますか?」
ぼんやりそんなことを考えていると突然意見を求められ、迷っている二つの指輪を眺めながらあいつならどっちを選ぶのだろうかと思った。
「自分なら……」
俺なら……
こっちを贈って欲しいと心の中で思い、俺が選ばなかった方をそのカップルに薦めた。
*
ほんと俺、性格悪いよな……
案の定いつもより忙しかった1日が終わり、駅に向かう為にゆっくりと歩きながらさっきの客のことを思い出していた。
結局、俺が薦めた方を購入してくれたけど……
仕事に私情を挟むのはよくないよな。
そんなモヤモヤした気持ちに何となく真っ直ぐ家に帰りたくなくて、どこかで飲んで帰ろうと思ったけれど……いつものバーはハロウィンパーティで貸切だったことを思い出した。
どうしようかと思い倦ね、いつもは通らない道を歩いてみることに。
すると、最近オープンしたばかりのシティーホテルの地下にバーがあるのを見つけた。
ここ、地下にバーなんかあったっけ?
でも、ホテルのバーなら落ち着いてそうだよな。
出来れば静かにゆっくり飲みたいと思っていたから、ちょうどいいかもしれないと迷うことなく地下へ続く階段を降りた。
少し重い扉を開けると、ワントーン暗い照明と落ちいたピアノ曲が流れる空間が。
そこは確かに落ち着いた空間が広がっていてカウンターに通された俺はゆっくりと店内を見渡した。
シャンデリアが店内の真ん中に垂れ下がり、それ以外は間接照明の明かりだけ。
席はそれほど多くなくて10席程度。
ハロウィンだからか、あちこちにかぼちゃの形をしたランタンが置いてあり、それ以外は時に装飾は見られず、そんな控えめなとこも結構気に入った。
「お一人ですか?」
とりあえず頼んだビールを飲んでいると、後ろから声がして自分も一人だから一緒に飲みませんかと誘われた。
同世代くらいのその男が俺の返事を聞く前にもう隣に座っていて、人懐っこい笑顔で、「乾杯」と俺のグラスに傾けるとカンっと音が響いた。
「あの……」
「ごめんね、強引で。でも、一人で飲むより二人の方がきっと美味しいと思うよ?」
「そ……そうですよね、一緒に飲みましょう」
その男は……初めて会ったはずなのに物腰が柔らかくてとても話しやすく、それにどことなく懐かしいような……
上手く説明出来ない不思議な存在感を放っていた。
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